伝統の200km耐久戦はルノー勢が完全制圧。トヨタから参戦のフェネストラズ組は8位に/STC2000第8戦

 2021年のスーパーTC2000(STC2000)第8戦として、9月3~5日の週末にアルゼンチンの首都ブエノスアイレスの元F1トラック、オスカー・ファン・ガルベスで開催されたシリーズ伝統の“200kmレース”は、公式練習から速さを見せたルノースポール・カストロール・チーム勢が席巻した。

 2019年チャンピオンのリオネル・ペーニャとペアを組んだ、2016年のTC2000シリーズ王者アントニーノ・ガルシア組のルノー・フルーエンスGTが勝利を挙げ、アグスティン・カナピノ/リカルド・リサッティ組(シボレーYPFクルーズ)、マティアス・ミラ/ホルヘ・バリオ組(ルノー・フルーエンスGT)が表彰台に上がっている。

 シリーズに参戦するファクトリー系チームとして、ホンダ陣営のプーマ・エナジー・ホンダ・レーシングとともにルノー勢とタイトル争いを繰り広げるTOYOTA GAZOO Racing YPFインフィニアは、今季で15回目の開催を迎えるドライバー交代を伴う長距離戦に向け、豪華ゲストドライバーの起用をアナウンス。

 ディフェンディングチャンピオンでシリーズ“5冠”を誇るマティアス・ロッシ(トヨタ・カローラSTC2000)の相棒には、WEC世界耐久選手権においてシーズン最大の山場であり、伝統のル・マン24時間レースで初優勝を達成したばかりのホセ-マリア・ロペスを招聘した。

 さらに、そのロッシの僚友を務める“スピードスター”ことジュリアン・サンテロのペアには、日本のモータースポーツシーンでTOM’Sに所属し活躍を演じてきたサッシャ・フェネストラズを抜擢するなど、戦前から大きな話題を集めた。

 そのゲスト勢に割り当てられた現地金曜のリハーサル枠を経て、都合3度の公式練習ではすべてのセッションでルノー・フルーエンスGTが最速を記録する幕開けに。

 勢いそのままに予選へと臨んだルノー勢は、通り雨が過ぎたダンプ・コンディションのトラックでも速さを維持し、2名のドライバーによる合算タイムでペーニャ/ガルシア組の3号車がポールポジションを確保。2番手にはホンダに乗るファン-アンヘル・ロッソ/ファクンド・マルケス組の34号車シビックSTC2000が続き、セカンドロウ3番手以下に、カナピノ/リサッティ組のシボレーと2冠王者ファクンド・アルドゥソ/ガブリエル・ポンセ・デ・レオン組(ホンダ・シビックSTC2000)が並ぶ上位グリッドとなった。

世界的な渡航制限により、例年のようなスター選手大挙とはいかなかったものの、直近に『ル・マン24時間レース』初制覇を果たした英雄ホセ-マリア・ロペスが参戦
ジュリアン・サンテロの68号車のゲストドライバーには、サッシャ・フェネストラズが抜擢された
通り雨が過ぎたダンプコンディションの予選では、ペーニャ/ガルシア組の3号車がポールポジションを確保
「(ペアを組んだ)アントニーノは本当にオールラウンダーだ」と、その予選アタックを見守った2019年王者リオネル・ペーニャ
日曜午前のスタートでも、ポールシッターのペーニャ/ガルシア組3号車が順当にリードを維持していく

■ゲスト参戦のサッシャ・フェネストラズ「アルゼンチンでのデビューと今回の経験に満足」

 日曜午前10時50分より、周回数60周または最大100分のレース時間上限で開始となった決勝は、スタートから順当にホールショットを奪ったポールシッターが序盤戦のリードを守り、後続のトラブルを尻目にロッソ/マルケス組のホンダ・シビックを従えて、3番手のシボレー86号車以下を引き離していく。

 中盤25周目になるとピットウインドウが開き、3番手のカナピノ/リサッティ組シボレーを筆頭に、アルドゥソ/ポンセ・デ・レオン組シビックや、7番手を争っていたロッシ/ロペス組カローラが続々とピットレーンへとなだれ込む。

 その2周後には首位のペーニャ/ガルシア組ルノーがドライバー交代へ向かい、2番手ロッソ/マルケス組シビック34号車がリードを引き継ぐと、これを機会にホンダ陣営を次々と不幸が襲う展開に。

 同じラップでトップ10圏内に浮上していたファビアン・シャナントゥオーニ/マティアス・ムニョス・マルケージ組がトラブルを抱えて戦列を去ると、2冠王者アルドゥソ/ポンセ・デ・レオン組の83号車も左フロントタイヤが外れてストップ。これでレース終盤を前に、ホンダ勢は4台中2台を失う形となってしまう。

 31周目にロッソ/マルケス組のホンダがピットへと入り、コース復帰後にはシボレーに先行され3番手へと後退。ペーニャ/ガルシア組ルノーがリードラップを奪回し、4番手ミラ/バリオ組ルノーの背後にはロッシ/ロペス組のトヨタ・カローラが浮上してくる。

 しかし、フィニッシュを目前にしてWTCC世界ツーリングカー選手権3連覇を誇る英雄のカローラにも不幸な結末が訪れ、トヨタの1号車も左フロントタイヤがブローしてストップ。首位のペーニャ/ガルシア組ルノー・フルーエンスGTが完璧な週末を締め括る勝利を飾り、これでルノー・スポール・アルゼンティーナは4年連続で“ブエノスアイレス200km”を制覇。2位にカナピノ/リサッティ組シボレーが続き、終盤にロッソ/マルケス組のホンダをパスしたミラ/バリオ組のルノーが3位ポディウムを獲得している。

 一方、予選11番手から浮上を期したサンテロ/フェネストラズ組の68号車トヨタ・カローラSTC2000だったが、この週末のカローラには上位に伍するスピードがなく8位フィニッシュが精一杯。初参戦となったフェネストラズは自身のSNSを通じ「いくつかの技術的な問題を伴う複雑なレースだったが、アルゼンチンでのデビューと今回の経験には満足だ」と語っている。

 この週末の結果により、選手権首位で臨んでいたロッシはペーニャにポイントリーダーの座を明け渡し、カナピノにも逆転され3番手に後退。続くSTC2000第9戦は9月24~26日の週末にサン・フアン、ビリクム・サーキットでの開催が予定されている。

この週末で唯一、ルノーの牙城に挑んだアグスティン・カナピノ/リカルド・リサッティ組(シボレーYPFクルーズ)は2位に終わった
今季からPuma Energy Honda Racing(プーマ・エナジー・ホンダ・レーシング)移籍の2冠王者ファクンド・アルドゥソ組はトラブルで戦列を去る
ロッシ/ロペス組カローラも、終盤に左フロントタイヤがブローしたことで上位進出の機会を逸することに
レース終盤に向けジリジリとポジションを上げたサンテロ/フェネストラズ組の68号車は8位フィニッシュ
「コースイン直後の2周でタイヤの状態を見極め、最後はマネジメントに徹した」と、完璧な仕事を達成したアントニーノ・ガルシア(左)

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