パリ五輪卓球日本代表は国内選考会含むポイント制 宮﨑強化本部長が考え語る

日本卓球協会強化本部長の宮﨑義仁氏は12日、報道陣へのオンライン会見で、パリ五輪男女代表選手選考に関する考え方を発表した。なお、選考基準の正式発表は、2022年中に予定されているIOC及びITTFの「2024年パリオリンピック開催要項」発表後となる。

会見では、新設されたパリオリンピック選考会の2022年の日程や世界選手権、アジア競技大会の代表選考の考え方も発表された。

パリオリンピック選考会

現在のところ、パリオリンピック選考会は男女シングルス各32名によるすべて7ゲームマッチのトーナメント方式で開催される想定だ。

その意図に関して宮﨑氏は「なるべくテレビ放送を組み入れて、国民の皆さんに卓球競技を楽しんでいただきたい。卓球に注目していただきたいので、決勝トーナメント方式をとらせていただきたいと考えている」と明かした。

各組合せは各大会要項を約1ヶ月前に発表し、その中で明確にされるという。日程、場所、参加人数は以下の通り。

第1回兼世界選手権(団体戦)選考会

日程:2022年3月5日~6日
場所:アリーナ立川立飛
参加人数:男女シングルス各32名
(1)第32回オリンピック競技大会(2020/東京)卓球競技大会で種目に関わらずメダル獲得した選手
(2)2021年9月世界選手権選考会ベスト8進出の選出
(3)2021年10月アジア選手権大会シングルスベスト4進出の選手
(4)2021年11月世界選手権対赤井シングルスベスト16進出の選手
(5)2022年1月開催の全日本選手権大会シングルスベスト16進出の選手
(6)2022年1月開催の全日本選手権大会ジュニアの部シングルスベスト4進出の選手
(7)令和3年度全国高校総合体育大会シングルス優勝者
(8)2021年全日本卓球選手権大会ホープスの部優勝者
(9)令和3年度全国中学校卓球大会シングルス優勝者
(10)2021年10月開催の全日本選手権大会カデットの部13歳/14歳優勝者
(11)令和3年度全日本大学総合卓球選手権大会シングルス優勝者
(12)2021年全日本社会人卓球選手権大会シングルス優勝者
(13)強化本部推薦(32名に達するまで)

第2回兼アジア競技大会選考会

日程:2022年7月16日~17日
場所:未定
参加人数:男女シングルス各32名
(1)2022年3月第1回パリオリンピック選考会ベスト16進出の選手
(2)2022年5月予定の世界選手権団体戦日本代表選手
(3)HNT U-12第2回パリオリンピック予選会から2名
(4)JNT U-15第2回パリオリンピック予選会から3名
(5)JNT U-18第2回パリオリンピック予選会から4名
(6)NT/NT候補第2回オリンピック予選会から32名に達するまで

第3回

日程:2022年11月12日~13日
場所:未定
参加人数:男女シングルス各32名
(1)2022年7月第2回パリオリンピック選考会ベスト16進出の選手
(2)2022年9月アジア競技大会団体戦日本代表選手5名
(3)HNT U-12第3回パリオリンピック予選会から2名
(4)JNT U-15第3回パリオリンピック予選会から3名
(5)JNT U-18第3回パリオリンピック予選会から4名
(6)NT/NT候補第3回オリンピック予選会から32名に達するまで

世界選手権、アジア競技大会代表について

また、同時に選考レースに組み込まれる2022年の世界選手権、アジア競技大会の代表選考についての考え方も会見では示された。

2022世界卓球選手権大会(団体戦)男女日本代表選考の考え方

代表選手の人数は5名とし、以下の基準を満たした者の中から選出する。

①第32回オリンピック競技大会(2020/東京)卓球競技シングルスにてメダル獲得した選手
※すでに終了した大会で伊藤美誠選手が該当する
②ITTF世界卓球選手権ヒューストン大会シングルスにてメダルを獲得した選手
③2022全日本卓球選手権大会一般シングルスにて優勝した選手
④第1回パリオリンピック選考会の順位にて5名枠に達するまで繰り上げ代表権利を付与する
⑤上記選考順位は数字の若い方から優先的に選考する。同順位の場合は強化本部で決定する

第19回アジア競技大会卓球競技男女日本代表選手選考の考え方

代表選手はシングルス各2名、ダブルス各2組、混合ダブルス2組は以下の基準を満たした者の中から選出する

①第1回・第2回パリオリンピック選考会のパリオリンピック選考ポイント合計の上位5名
・上記①のポイント上位2名をシングルス種目にエントリーする
・男女ダブルス種目は各2ペア、混合ダブルスは2ペアのペアリングは強化本部で決定する
②辞退者が出た場合は上記①の順位にて5名枠に達するまで繰上げ代表権利を付与する
③上記で同ポイントの場合は第2回パリオリンピック選考会順位を優先する

シングルス選考ポイント

オンライン会見中に示されたシングルスのポイント表は以下。

写真:パリ五輪選考ポイント資料/提供:オンライン会見中の資料より

宮﨑義仁氏コメント

写真:日本卓球協会強化本部長の宮﨑義仁氏/提供:ラリーズ編集部

最後に宮﨑氏は、報道陣からの質問に答えた。

選考基準を作る過程で苦労した点(スケジュールについて)

国際大会がなかなか開催されない中、国内でみんなで争う場を設ける方が絶対競技力が上がるという確信は、ほとんどのスタッフが思っておりました。

ではどのようにスケジュールを作っていくか。一流選手が出ないであろう谷間のスケジュールを狙って作っていきました。

しかし、ITTFおよびWTTが(国際大会の)スケジュールを発表するのが最近では大会直前になっています。ITTF、WTT対して、「できるだけ偶数月に国際大会をやってくれ。我々は奇数月に試合を計画するから」と伝え、3月、7月、11月に計画をいたしました。この個々の(選考会の)スケジュールは伝えており、「この日程にぶつけない限り日本はすべての大会に出られます」と伝えました。

「ITTFは偶数月に国際大会をやるという発表をすれば、226の国と地域は安心して国内大会を奇数月に計画できる」と伝えております。そのようにはならないと思いますけど、そういう風になることを願って奇数月に計画をしました。

選考基準を作る過程で苦労した点(その他)

一番苦しかったのは、現時点で伊藤美誠選手(スターツ)がTリーグに加入していないというところでした。1人の選手を(選考の一部から)外すようなことにならないかということを悩みました。ですから、(伊藤がTリーグに参加していない)今年から選考をスタートすることはできません。

来年の9月のTリーグからスタートすることで全ての選手に契約する期間のチャンスを待つ、という考え方をいたしました。

逆に今季契約している選手も来季契約しないかもしれません。そういう選手はTリーグに出ない限り、ポイントが(得られない)。1ポイントと2ポイントですけど、小さな積み重ねが最後生きるかもしれませんよね。

そういう意味では契約してない選手には申し訳ない気持ちもありましたけど、国内の競争を激化して、国内でみんなで切磋琢磨しようとしたときには、何とか100試合近くあるTリーグの試合に参戦いただいて、みんなで磨き合ってもらいたいなという思いで、この選考の考え方を決めていきました。

一番苦しかったのはそういうところですかね。

選手から出た意見で反映した点

第1回選考会出場基準のところで、(7)令和3年度全国高校総合体育大会シングルス優勝者がホープスより上に来ていますよね。年の若い方を上にするということだったので、本当であればこれは(10)のカデットの下に置いてたんですよね。

ところが、今年のインターハイのチャンピオン2人は、世界ユースが12月に行われるわけですけど、世界ユースも世界ランキングが高い者しか出られない。インターハイで優勝したのにシングルスに出られないで団体戦しか出られない。

インターハイチャンピオンになってもユースの世界大会にはシングルスには出られないということもあって、選考会の順位を繰り上げさせていただいた。その1箇所だけです。

若い選手の優先順位を上にする狙い

パリ五輪に出るのは、(選考会)上位ベスト16を引き続いた選手で、その中で上位の1位、2位になって、世界選手権とかアジア競技大会に選ばれた選手が(国際大会でも)ポイントを獲っていきます。

ですから、32人の中で1回戦で負けた選手が、五輪の代表になると言うことは考えられません。ベスト16に入った中のトップの1,2名が五輪代表になるわけです。17~32位の選手というのは、育成する選手だと私は思っております。

次のロサンゼルス五輪、2030年の五輪を考えたときには若い選手を絶え間なく使いながら、強化していくことが将来を考えると非常に重要かなと。

Tリーグ個人戦について

トーナメントで順位決定もあります。ただし、ベスト8、ベスト16は順位決定戦を行わないです。通常の選考会は32名で行われますけど、Tリーグの個人戦は16名で行うのが基本となっております。具体的な素案はTリーグの中で決定して、12月の理事会までに日本卓球協会に提出するということになっております。

Tリーグが選考のポイントに入ることは、Tリーグに参加していない選手や所属先から意見はなかったのか

今のところ5回ほどの会議を経てきているが、一言も異論はございません。

その他ポイントについての意見

ポイントについて、国際大会のポイントが高くはないかという意見は1つありました。

「国内の選考会でもし落ちて、国際大会に出た選手に高いポイントを獲られたらもう追いつけない」という意見でしたけど、私としては国内の選考会を経て、代表として出て、国際大会で活躍する、そういう選手だけが五輪に出られると思っています。

国内でも勝てて、国際でもさらに勝った選手を選ぶには、国際大会のポイントも高く位置付けたほうが良いと思ってこういう設定をしていると説明し、納得していただきました。

東京五輪で選手たちは選考レースで疲弊していたという話もあったが

疲弊というのは当てはまらないと思います。あの激化した強化のおかげで、私は代表になった選手は強くなったと思っています。

確かに疲弊という言葉も出す人もいらっしゃいますけど、私はあれ(東京五輪選考レース)は強化の積み重ねだと思います。体力もメンタルも相当鍛えられた。その結果が東京五輪での好成績に繋がったと思っております。

五輪団体戦のシードに関しては、世界ランキングが重要になるのではないのか

選考会を経て、国内で代表を獲って、国際大会でも良い成績を残した選手が(選考ポイントの)1位、2位になってくると思いますので、自然と世界ランキングの高い選手が代表になると思っています。

また、WTTの大会にはすべて参加する考えを持っておりますので、世界ランキングが下がるという考えはございません。

ただし、選考会を勝ち抜いた2人が、日本人の世界ランキング最高ランキングとなるかと言うと、そうではない可能性もあります。ただし、国内の選考会と国際のポイント合計で争いますから、国際のポイントも相当高くないと(パリ五輪選考)1位、2位には入れない。すなわち、世界ランキングの高い選手が選ばれるという見込みを現時点ではしております。

文:ラリーズ編集部

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