線状降水帯沿いで被害大 長崎県内8月大雨

主な土砂災害発生地点

 5人が死亡した8月の大雨は降り始めから11日で1カ月を迎えた。長崎県によると、県内で5人以上が亡くなる風水害は1991年の台風19号以来。気象台や専門家の分析では、被害拡大の背景に線状降水帯の発生や記録的な長雨があったことが浮かび上がる。
 長崎地方気象台によると、8月の大雨は線状降水帯の発生や大雨特別警報の発表、総雨量の多さが特徴に挙げられるという。
 8月14日、西彼杵半島から佐世保市や東彼杵郡方面にかけて線状降水帯が確認され、気象台は「顕著な大雨情報」を県内で初めて発表。長崎、佐世保、西海、東彼杵、川棚、波佐見の6市町に大雨特別警報を出し、6市町は避難情報で最も危険度が高い「緊急安全確保」を発令した。
▼指 摘
 長崎大大学院の蒋宇静(ジャンイジン)教授(地盤防災工学)は「県内各地で土砂災害が起き、特に線状降水帯に沿って被害が大きい」と指摘する。蒋教授が主な土砂災害の発生地点を地図上にまとめたところ、緊急安全確保が出た自治体を中心に被害が相次いだことが浮き彫りになった=図参照=。
 長雨による総雨量も記録的な数値となった。各地の8月の総雨量は雲仙岳1587.5ミリ、諫早1273ミリ、長崎935ミリなど。複数の地点で平年1年間に降る量の半分に達し、72時間雨量は7地点(統計開始1年以内を除く)で観測史上最大を更新した。
 長崎の1時間雨量は最大47ミリで、過去の大雨と比べて極端に大きい数値ではない。だが1時間20ミリ以上の強い雨を観測した日数は計6日間を数えた。
▼懸 念
 気象台は、長雨により土壌中の水分量が増え土砂崩れが起きることがあると指摘する。蒋教授も「雨が弱くても累積雨量が多ければ地盤が弱まり崩壊する」とし、短時間に猛烈に降る雨と比べ長雨は「雨が激しくないので大丈夫と勘違いしやすい」と懸念を示す。
 気象情報や避難情報が相次いで発表されたが、避難者数は伸び悩んだ。台風シーズンを前に県の担当者は「避難情報や気象情報を参考に、早めに『避難スイッチ』を入れてほしい」と改めて促している。

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