首位打者狙うオースティン、新人王狙える牧… 越えなければならない“壁”とは?

DeNA・牧秀悟(左)とタイラー・オースティン【写真:荒川祐史】

全力プレーゆえの代償、昨季もフェンス激突で戦線離脱

■DeNA 8ー1 阪神(12日・横浜)

DeNAは9月に入ってから、対巨人3連戦(7~9日)に2勝1分、12日も本拠地・横浜スタジアムで首位の阪神に8-1と大勝。開幕直後の不振が響いて順位はいまだ5位だが、俄然存在感を放っている。個人タイトルでも、タイラー・オースティン外野手に首位打者、ルーキー・牧秀悟内野手には新人王獲得の期待が高まっている。

12日の阪神戦。オースティンは3回、阪神先発・ガンケルの内角高めツーシームにやや詰まらされながら、バックスクリーン左の中堅席へ運ぶ24号2ラン。7回には2番手・馬場から中堅スコアボードの右端を直撃する特大の25号3ランを放ち、「久しぶりに素晴らしい感触だった」と相好を崩した。

この試合、実に4打数3安打5打点。現在打率は.329でリーグトップを走る。桑原が.311で同4位、宮崎が.307で同5位、佐野が.306で同6位と3割打者が4人並ぶDeNA打線にあっても、オースティンの安定感は際立つ。

それだけではない。初回に二塁打を放った後、ソトの2球目に相手の無警戒を突き三盗を仕掛けていた。ソトがファウルを打ったため実を結ばなかったが、一瞬たりとも手を抜かない姿勢には頭が下がる。しかし、ここに一抹の不安も潜んでいるのだ。

というのも、オースティンは8月20日の巨人戦で守備中、ダイビングキャッチした際に上半身を痛め、翌日から4試合連続でスタメンを外れた。昨季も守備で右翼フェンスに激突し、脳振とうとむち打ちで戦線離脱するなど、全力プレーを貫くがゆえの負傷が多かった。故障をいかに回避できるかが、タイトル獲得の鍵になりそうだ。

新人初のサイクル安打達成も、チーム内の定位置争い激化

一方の牧はこれまで、新人王と考えると阪神の佐藤輝明内野手に印象度で大きく水をあけられていた。ただ8月25日の阪神戦で、新人としては史上初のサイクル安打を達成、さらに佐藤輝が打撃不振で2軍落ちしたこともあって、チャンス到来だ。13日現在、打率.276、16本塁打、52打点をマークし、佐藤輝の.254、23本塁打、60打点に決して引けを取らない。広島の守護神として防御率0.47を誇る栗林良吏投手を含め、新人王争いの行方は予断を許さない。

三浦大輔監督は「まだルーキーなので、覚えていかなければいけないことがたくさんあるが、試合に出ながら成長してくれています」と評するものの、常時出場を保証されているわけではない。12日の阪神戦では、5試合ぶりにスタメンから外れた。7回から一塁の守備に就いたが、1打数無安打に終わっている。

シーズン前半が終わろうとする頃から、2年目19歳の森敬斗内野手が台頭し、大和内野手、柴田竜拓内野手と遊撃の定位置争いが激化。その結果、大和や柴田が二塁で先発することもあり、牧はあおりを受けている格好だ。牧は本職の二塁の他、一塁も守れるが、ここには貴重な長距離砲のネフタリ・ソト内野手がいて、スタメン出場は難しい状況だ。

「ベテランの大和は、出たり出なかったりだが、常に怠りなく準備をしてくれている。そういう姿勢を若い選手たちが見て学んでいる」と三浦監督。牧としては、与えられた出場機会を確実にものにし、「今年しかないので狙っていきたい」と明言する新人王獲得へつなげたいところ。タイトルに近い位置にいる2人をはじめ、DeNA打線には見どころが詰まっている。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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