スーパーGTの夏季2戦で起きたドライバーの脱水症状について、GTA坂東代表が見解

 9月12日、スーパーGTをプロモートするGTアソシエイションの坂東正明代表は、第5戦SUGOの決勝日に行われたGTA定例記者会見のなかで、第4戦もてぎ、第3戦鈴鹿とGT300チームのなかで熱中症に見舞われたドライバーがいたことをうけ、その対策についての考えを語った。

 2021年のスーパーGTは、第2戦富士に続き5月に第3戦鈴鹿が予定されていたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響によるまん延防止措置の発令にともない、8月に延期されていた。そのため7月17〜18日の第4戦もてぎ、8月21〜22日の第3戦鈴鹿は、暑い夏場のレースとなった。

 そんな2戦で、GT300クラスのドライバーで決勝レース中に熱中症に見舞われてしまうケースが見られた。第4戦もてぎではARTA NSX GT3の佐藤蓮が、第3戦鈴鹿ではマッハ車検 GTNET MC86 マッハ号の平木玲次が熱中症となってしまった。幸いふたりともに深刻な状態ではなかった。ただ、どちらも今季初のフル参戦のドライバーであるということも気になるところだろう。

 過去にはマレーシアでのレースでも脱水症状になるドライバーが相次いでいたが、現在はGT500クラスではレース用のエアコンが活用されている。またドライバーの熱中症対策については、スーパーGTのスポーティングレギュレーション内の第25条5.『エアコンディショナー装置』のなかで、下記のように示されている。

「競技中のドライバーの熱中症防止等ドライバー保護のためのエアコンディショナー(ドライバークーリングシステム全般)の装備が推奨される。エアコンディショナーを装備しない場合、GTAが指定する競技会においては、クールスーツシステムの搭載および使用が義務付けられる」

 夏季のレースはGT3カーに装着されるエアコン(オプション扱いのことも多く、装着されていない車両も多い)や、エアコンがない場合はクールスーツ使用が義務づけられる。クールスーツのエアコンを切ったりすることは許されていない。またクールスーツについては正常に作動しなかったり、ホースが接続されなかったりということもあるが、本来は作動していなかった場合はピットインし、正常な状態にしなければならない。

 それでも熱中症になってしまうこともあるが、スーパーGT第5戦鈴鹿で行われた定例記者会見のなかで、坂東代表はコクピット環境、脱水症状への対策について問われると、「テクニカルの部分では、再三に渡ってチームにもクールスーツやドリンクの確認などを伝えている」と答えた。

 坂東代表は鈴鹿での平木の例をとり、「無線も繋がっておらず、ドライバーと確認がとれなかった。しかしドライバーはその順位にいれば(タイヤ無交換作戦を遂行し、優勝争いを展開していた)、仕事だし結果も残したいので頑張ってしまう」と理解を示しつつも、「アクシデントが重なった状態だったが、ドリンク、クールスーツがない状況では、ピットに入れるようにしなければならない」と語った。

 今後、さらに厳格なレギュレーションを作るかどうかは「今後のこと」としたが、「まずは確認を怠らないこと」と坂東代表は語った。また、夏場のレースとは言え夕刻になれば気温も下がる。スタート時刻を遅らせることについて坂東代表は、「過去のレースの気温も調べている」とし、第3戦鈴鹿についてはこれを考慮し14時スタートにしたと語った。

 ただ現段階で、スタート時刻に対してやはりネックになってしまうのは、新型コロナウイルス感染症対策だ。涼しい夕刻にすれば、必然的に撤収作業も遅くなる。「まん延防止措置が出ていた場合、チームや関係者が開催地に残って、日曜の決勝後に宿泊するのは避けたい。ファクトリーに帰らせたい」と坂東代表。また開催地からも同様の要望が出ていたという。

 現在、多くのチームはレース後に撤収作業を行い、20時にスタッフがサーキットを出られるかどうかの状況。遠隔地であればさらに状況は変わってくる。岡山やオートポリスであれば、17時〜18時ごろにサーキットを出なければ、当日の最終の飛行機や新幹線に乗ることはできない。飛行機でもドライバーや監督で満席の場合がほとんどだ。

 また近年はピット内の設備の設営のためやスケジュール等の関係で、一部が木曜にサーキット入りするチームもある。スーパーGTでは経費削減のため金曜フリー走行がなくなって久しいが、「経費削減をするためであって、金曜に移動すれば良いとしていた」と坂東代表は言う。

 その上で坂東代表は、「金曜から来ることを徹底させ、宿泊経費などのいろんな意見を聞き、その地盤を考えていきたい。少しでも路温、気温が下がる状態で、片付けもゆっくりできる環境を作りたい。ウィズコロナのなかでどうできるか」と新型コロナウイルスの状況、さらに経費とのバランスなどを検討しながら、涼しい時間帯での開催も検討したいと語った。

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