中田翔〝超復調〟の裏にG首脳陣の巧みな操縦術 ミスターと阿部二軍監督の特別講義が効いた

2戦連発となる2ランを放った中田

完全復活の日は近いか。二軍で再調整中の巨人・中田翔内野手(32)が連日の猛アピールを続けている。11日の二軍降格後は5試合に出場して打率6割1分1厘(18打数11安打)、4本塁打、13打点と大暴れ。今季は開幕から不振にあえいでいたが、不調時とは見違えるようなスイングを見せている。そんな復調の要因としては首脳陣による巧みな〝中田操縦術〟があったようだ。

二軍とはいえ、勢いはとどまるところを知らない。16日に行われたイースタン・楽天戦(ジャイアンツ球場)に「4番・DH」で先発出場すると、2打席連続本塁打を含む4打数3安打3打点と大活躍。中田が「日々ファンの皆さまの拍手や視線に勇気づけられています。皆さまの力でスタンドまで届いてくれました」と語った3回の1本目は、逆転3ランを放った前日に続く2試合連発。さらに5回にも中越えへ特大アーチを描き、まさに連日の「翔タイム」となった。

試合前にマンツーマン指導を行っていた阿部慎之助二軍監督(42)も「もともと持ってる力がやっとちょっとよみがえってきたかな、という感じかな」と評価。早期の一軍復帰に向けて、着実に歩を進めている。

昨季は打点王も獲得した「北の大砲」だけに、本来の力をもってすれば二軍にいるべき選手ではない。今季は開幕から不振に苦しみ、腰痛もあって日本ハム時代には久々の二軍落ちも経験。巨人に移籍後も改善傾向はみられず、16試合に出場して打率は1割5分(40打数6安打)、1本塁打、2打点と超低空飛行を続けていた。

11日に一軍登録を抹消されることとなったが、それでも首脳陣は決して見放すことはなかった。抹消直後の13日には〝レジェンド〟長嶋茂雄終身名誉監督(85)がジャイアンツ球場に駆けつけ、約1時間にわたって直接指導。ミスターは「きっと近いうちに、東京ドームで中田選手の特大ホームランが見られると思うよ」と、中田の復活を予告した。

スラッガーの先輩・阿部二軍監督による中田への個別指導も連日実施。普段、指揮官が若手選手に対して多用するモーレツ指導ではなく、練習量をこなしながらも中田の実績を尊重したきめ細かな技術指導が行われており、中田自身も熱心に聞き入っている様子が目立っている。

この2人の特別講義が、復調の大きな要因になっている。というのも、二軍降格間近とされていた今月序盤、古巣・日本ハム関係者からはこんな声が聞こえていたからだ。「中田はああ見えてかなり繊細だし、モチベーションをうまく保たせながら二軍で調整させるのは至難の業ですよ。これまでの実績もあるし、彼なりのやり方もある。プライドもある程度尊重しながら復調を促すことができるかがカギになると思います」

そんな意図を知ってか知らずか、ミスターというレジェンドによる指導が中田のモチベーション向上に大きな役割を果たすと、阿部二軍監督も中田を「1人の実績ある打者」として扱い、綿密に指導することによって強打者の尊厳を保っている。まさに古巣の〝マニュアル通り〟で、巨人軍が誇る最強バックアップ体制がピタリとはまったといえる。

このままなら早期昇格もありそうで、一軍でも本塁打を打ちまくる中田が見られるか。

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