ほぼ全身の骨格出土 千々石ミゲルとみて鑑定へ 諫早・4次発掘調査

ほぼ全身が出土した人骨について報道陣に説明する田中教授=諫早市多良見町

 天正遣欧使節の一人、千々石ミゲルの子孫や識者らでつくる民間の「千々石ミゲル墓所調査プロジェクト」が長崎県諫早市多良見町山川内のミゲル墓所推定地で進めていた第4次発掘調査で、同プロジェクトは16日、出土したほぼ全身の骨格を現地で報道陣に公開した。歯が残存することも新たに確認。同プロジェクトはミゲルの遺骨とみて、性別や年齢の鑑定を進める。今回で最終と位置付ける第4次調査はほぼ終了した。
 2017年の前回調査では、禁教令後の1633年に没した男女2人の戒名が刻まれた日蓮宗形式の墓碑に向かって右側から墓坑(1号墓)が見つかり、キリスト信仰用具の一部や、ミゲルの妻のものと推定される人骨と歯が出土した。
 今回、左側で新たな墓坑(2号墓)を発見。キリシタン遺物は出なかったが、調査責任者の田中裕介別府大教授(61)=考古学=は「1号墓も2号墓も六道銭が納められていないなど、(この時代の)仏教的儀式をしていない。(ミゲルは同使節の4人の中で唯一、キリスト教を棄教したとされるが)2人が(キリストの)信仰形態を尊重していた可能性が非常に高い」との見方を示した。
 12日の会見時は一部だけだった2号墓の骨も、その後の発掘で頭部や胸部、骨盤、大腿(だいたい)骨などほぼ全身が出土。1号墓の女性と同様、頭を西に、顔と体を南に向け、脚を折り曲げた格好で埋葬されていた。田中教授は「墓碑に書かれている2人の墓が、二つをセットで非常に計画的に造られた立派な墓所であることが分かった」と述べた。
 その生涯をどう閉じたのかなど、晩年については謎が多いミゲル。墓所推定地では2014年の第1次から調査が続いてきた。ミゲルの子孫でプロジェクトの浅田昌彦代表(68)は「集大成の成果が得られた。この墓所がどういった意味を持つのか、それを判断する材料が提供できた。区切りが付いた」と総括した。


© 株式会社長崎新聞社