【ローズS】「生まれる時代が早かった」“デインヒルマスター”が「別格」と称賛したファインモーション

2勝クラスからの重賞初挑戦で3馬身差の快勝だったファインモーション

【松浪大樹のあの日、あの時、あのレース=2002年ローズS】

ダンジグ系の最優良後継種牡馬デインヒル。すでにダンジグ系というくくりではなく、デインヒル系を形成するほどに大成功を収めた種牡馬ですが、リースでの供用もあった日本での活躍は、大成功と言えるほどではなかった気もします。もちろん、それなりに走りはしたんですけど、日本でのGⅠ馬はファインモーションのみ。海外での活躍を考えると、ちょっと物足りなくありませんか?

「そんなものですかね。乗せてもらう馬はみんな走るし、〝デインヒルってやっぱりすごい〟が、僕のイメージなんですけど」とは松永幹調教師。前述したファインモーションにも騎乗した経験がありますし、神戸新聞杯のエアエミネムも同騎手の手綱。金鯱賞を勝ったゼネラリスト、京成杯AHを連覇したブレイクタイムは主戦を務めていました。日本においての〝デインヒルマスター〟とも言うべき活躍を見せているお方です。

「印象深いのはブレイクタイム。デインヒル産駒は単純にスピードがあるだけでなく、そのパワーがすごかったんですが、ブレイクタイムは特にすごかったな。僕では持っていかれてしまうので、調教は助手さんにオマカセしていたんですよ(苦笑)」と当時を振り返る松永幹騎手改め、松永幹調教師。しかしながら、今回の会話の中で、何度も「別格」という言葉が出てきたのはファインモーションでしたね。実際、僕もそう思っていたので、うんうんとうなずくだけの取材になってしまいました(笑)。

「デビュー戦にはユタカ(武豊騎手)が乗っていて、僕は彼が乗るまでのつなぎ役と最初から認識していました。なので、彼にいい形でバトンを渡せるように…と思っていましたね。調教に乗った段階で〝勝つのは間違いないけど、問題はどのように乗って勝つか〟と。北海道の2戦目は2600メートルのレース(阿寒湖特別)に使って、問題なく勝っているんですけど、そんな距離を走ることもないわけですし、〝どうして2600メートル?〟という感じもするじゃないですか? でも、それが伊藤雄(伊藤雄二元調教師)さんのすごいところだったんでしょうね。当時の小林稔厩舎、伊藤雄二厩舎の馬の乗り味は、他の厩舎とはまるで違っていたんですけど、その中でもレベルが違ったんです。とにかく、何もかもがすごかった。本当に別格。どのレースも引っ張り切りで勝ちましたし、このローズSもそうだったんじゃないかな。秋華賞は外から見る形になりましたけど、まず勝つだろうと思って見てました。やっぱり楽勝でしたね」

少なくない名馬に乗り、管理もしてきた松永幹調教師が、これほどまでに大絶賛するのですから、とてつもなく〝別格〟の存在だったのでしょう。実際、僕も初めてファインモーションを見たとき、こんなにすごい馬がいるのか…と。当時の栗東にいた人間は誰もがそう感じていたと思います。ちなみに現在で言うところの2勝クラスからの格上挑戦で、初の重賞挑戦となったローズSは、2着サクラヴィクトリアに3馬身差の完勝でした。当時の単勝オッズは120円。格上挑戦の重賞初挑戦馬が背負う人気ではありませんよね(苦笑)。

「それこそ、現在のような海外遠征が頻繁な時代なら、世界に出て活躍していたかもしれません。生まれる時代が早かったのかな」

昔話に花が咲いた一日でした。

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