過去2年間の不振を乗り越えてリーグ打率トップ DeNA三浦監督が語る桑原の躍進の理由

DeNA・桑原将志【写真:荒川祐史】

20日の中日戦で2戦連続先頭打者弾含む3安打、打率.317でトップに

■DeNA 6ー0 中日(20日・横浜)

DeNAの桑原将志外野手は20日、本拠地・横浜スタジアムで行われた中日戦に「1番・中堅」で出場し、19日の同カードに続いて2試合連続で初回先頭打者本塁打を放った。しかも4打数3安打2打点の活躍で打率を.317に上げ、同僚のタイラー・オースティン外野手を抜いてリーグトップに躍り出た。一昨年と昨年は出場試合数がぞれぞれ2桁にとどまっていたが、三浦大輔監督の就任をきっかけに飛躍を遂げようとしている。

1回、中日先発・小笠原の初球の内角ストレートをとらえ、左翼席中段へ12号先制弾。19日の初回にもジャリエル・ロドリゲスのナックルカーブを左翼席へ運んだばかりだ。「ホームランは狙っていません。初球から僕らしいスイングをしていこうという思いが、最高の結果につながりました」と笑みを浮かべた。

この日の“桑原劇場”は、これだけではなかった。2回にも1死一、二塁から三塁線を抜く適時二塁打。6回には遊撃内野安打を放ち、猛打賞でチームを6-0の大勝に導いた。

守っても、4回1死一、二塁のピンチで、高橋周が放った飛球を追って背走。逆シングルでジャンピングキャッチした直後、フェンスに激突したが、ボールは離さなかった。DeNA先発のフェルナンド・ロメロ投手はセンターへ向かってグラブをはめた左手を高く上げ、感謝の気持ちを表した。桑原の好守もあってロメロは来日初完投を完封で飾った。

今季のセ・リーグ首位打者争いは、同僚のオースティン、宮崎敏郎内野手、佐野恵太外野手、広島の鈴木誠也外野手、阪神の近本光司外野手らが上位にひしめく大混戦。桑原は「タイトルには本当に興味がない。チャンスメークという自分の役割だけを意識しています。もしシーズンが終わった時に取れていれば、良かったと思えるのかもしれませんがね」と素っ気ない。

昨年まではタイトル争いどころでなかった。2017年に全143試合に出場し、外野手としてゴールデングラブ賞に輝いたが、打撃で伸び悩み、一昨年の出場は72試合、昨年に至っては34試合に激減した。今季の桑原の定位置である「1番・中堅」のスポットを、昨季専ら占めていたのは、オフに巨人へFA移籍した梶谷隆幸外野手だった。

三浦監督「熱くなりながらもやるべきことをやれるようになってきた」

実は、2軍暮らしが増えた桑原が持つ積極果敢さを、昨季2軍監督を務めた三浦大輔監督は大いに買っていた。1軍監督昇格とともに、桑原の出場機会は増えたが、一方で指揮官は「周りにスキを見せるな。油断していたら、すぐに代えるぞ」とプレッシャーを与え続けてきた。

実際のところ、桑原は派手に活躍し、派手にミスもする選手である。今季も、中前の小飛球にダイビングキャッチを試みて後逸し三塁打にしたり、満塁のピンチで平凡な中飛を落球し“3ランエラー”を犯したりしたこともあった。打っても、打撃でも凡フライを打ち上げた瞬間、諦めて全力疾走を怠り、相手が落球したにも関わらず一塁にストップしたことがあった。

この日も4回には、無死一塁で三ゴロを打ち、ゲッツー崩れで一塁に残ったが、牽制に誘い出されて一、二塁間に挟まれ、アウトとなる一幕があった。「今日も走塁ミスをしてしまいました」と頭を垂れたが、必要以上に落ち込みはしない。「ミスをしたくてしているわけではないし、常に危機感を持って目の前のプレーに懸けている自負はありますから。ただ、ちゃんと準備ができていたかどうかを振り返り、次の試合にどう生かすかを考えるようにしています」と語る。

そんな桑原の現状を、三浦監督は「これまでは熱くなり過ぎて周りが見えなくなることが多かったが、熱くなりながらもやるべきことをやれるようになってきた。その辺はすごく成長している」と高く評価する。

三浦監督の就任、梶谷の移籍がきっかけになり、野球選手として大きくステップアップしつつある桑原。意識の外にあるタイトルも、気がついたら手にしているかもしれない。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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