初日首位発進、強敵ダニ・ソルドを降したアンドレアス・ミケルセンが逆転勝利/ERC第5戦

 ERCヨーロッパ・ラリー選手権第5戦となる第55回アゾレス・ラリーが9月16~17日に争われ、初日レグ1はインド製タイヤの開発チームとして参戦するチームMRFタイヤに強力助っ人として加わった38歳のベテラン、ダニ・ソルド(ヒュンダイi20 R5)が選手権リーダーのアンドレアス・ミケルセン(シュコダ・ファビア・ラリー2エボ/トックスポーツWRT)を約4秒差で上回り首位に立つ展開に。しかし、レグ2の5ステージでベストタイムを奪取したミケルセンが、追い縋るソルドを14.8秒差で逆転し、今季ERC初優勝を飾っている。

 シリーズ伝統の1戦として、大西洋中部に浮かぶサンミゲル島を中心に開催される風光明媚なグラベル戦に向け、クレイグ・ブリーン、シモン・カンペデッリ、そして前戦のWRC3チャンピオンのヤリ・フッツネンに続き、ERCでのMRFタイヤ開発作業に加わったスペイン出身のWRCトップランナーは、初日のSS1、SS2こそ地元スペシャリストのリカルド・モーラ(シュコダ・ファビア・ラリー2エボ)に対し29.1秒ものビハインドを背負う展開となる。

 しかし、ここから驚異の学習速度を披露した“アゾレス諸島のルーキー”は、SS5でついにステージベストを叩き出すと、レグ1最終4.1kmのスーパースペシャル(SSS)で6.4秒差を逆転。ラリーリーダーとしてオーバーナイト・パルクフェルメに帰って来た。

「全体的に見て良い1日になったし、結局僕らは首位に立って初日を終えることができた。(アンドレアス・)ミケルセンはかなり遅れたようだし、(リカルド・)モーラは速いドライバーだが、明日は素晴らしい戦いになるだろうね」と笑顔を見せたヒュンダイ・ファクトリー契約ドライバーのソルド。

「条件は非常にトリッキーで、霧と雨でドライブするのはとても困難だったが、ステージを埋める多くの観客の姿を見ながらドライブするのは格別だった。個人的にもMRFタイヤの性能にとても満足しているし、チームはうまく機能し、タイヤに関する多くの情報を入手している。初日を首位で終え、最速のステージタイムが刻めたのも個人的にはうれしい。明日はミケルセンから身を守るための挑戦になるだろうが、僕らは最大限、努力するよ」

 一方、前半ループで大量マージンを刻みながら、最後のSSSでは自らの走行レーンが「ダストに覆われ、多くのタイムを失った」と肩を落とす3番手モーラに対し、SS4とSS6で最速を記録した2012年のアゾレス勝者、ミケルセンが総合2位でサービスに辿り着いた。

「ステージのいくつかは信じられないほどの悪条件だった」と、午前の気象条件に打ちのめされたと明かすミケルセン。「最初のステージはかなり霧がかかっていて、雨がたくさん降っていた。ワイパーはすべての水をキレイに弾くのに充分な速さではなかったので、視界の確保は本当に困難だったよ」

「その第2段階として、この非常に狭いセクションの途中でワイパーが機能しなくなり、地を這うような速度で戻って来たんだ。でも、ライバルたちも問題を抱えていたことで僕らはまだラリーに参加できている。明日も面白い展開になりそうだね」

レグ1午前は雨と霧の難コンディションのなか、驚異の学習速度を披露した“アゾレス諸島のルーキー”ダニ・ソルド(ヒュンダイi20 R5)が首位に立つ
現ERCチャンピオンのアレクセイ・ルカヤナク(シトロエンC3ラリー2/Saintéloc Junior Team)は初日SS1でパンクに見舞われると、続くSS3ではマシン半回転のアクシデントに
初日午前に、ハードコンパウンドを選択した失敗を嘆くアゾレス初参戦のウンベルト・スカンドーラ(ヒュンダイi20 R5)は6位フィニッシュ
「非常に狭いセクションの途中でワイパーが機能しなくなり、地を這うような速度で戻って来た」と初日を振り返ったアンドレアス・ミケルセン(シュコダ・ファビアRally2 Evo/Toksport WRT)

■「この素晴らしい大会でダニと戦うのは楽しかった」とミケルセン

 明けた土曜レグ2は7SS、合計89.84kmのスペシャルステージで争われ、走り出しの2ステージをミケルセンが獲り、この時点で1.9秒差の総合首位に浮上する。しかし続く名物ステージのSete Cidades 1(24.01km)と、前日も最速としたSSSで2連続ベストを記録したソルドがふたたび首位に返り咲くなど、両者一歩も譲らない勝負を繰り広げる。

 しかし午後のループに向けニュータイヤの供給本数が枯渇したソルドが遅れ始めると、SS11、SS12、そして最終のSS13とミケルセンが連続ベストを奪い、これで勝負アリ。14.8秒差までギャップを拡大したノルウェー出身の選手権リーダーが、そのマージンを34点まで広げる2021年ERC初勝利を手にした。

「ダニとのギャップが大きかったので、最終ステージは“賢く行こう”と考えていたんだ」と明かしたミケルセン。

「直近にペアを組んだ(コドライバーの)エリオット・エドモンドソンも素晴らしい仕事をし、彼にERC初優勝をプレゼントできて良かったよ。僕も自分自身に満足しているし、この素晴らしい大会でダニと戦うのは楽しかった。本当に素敵な週末で、とてもとても楽しかったよ!」

 そして初日から表彰台圏内を走行していた地元“10冠”のモーラは、なんと最終SSで左リヤをヒットし「非常にタイトなコーナーでバカなミスを犯し、内側をクリップした。それがすべてだ」と、タイヤビードがリムから脱落。代わってERCミシュラン・タレント・ファクトリーの最優秀ドライバーにも選出されている期待の新星エフレン・ヤレーナ(シュコダ・ファビア・ラリー2エボ/ラリー・チーム・スペイン)が、逆転の3位ポディウムを獲得した。

 一方、現ERCチャンピオンのアレクセイ・ルカヤナク(シトロエンC3ラリー2/サンテロック・ジュニア・チーム)は初日SS1でパンクに見舞われると、続くSS3ではマシン半回転のアクシデントでタイムロス。レグ2でもSS7で“ダブルパンクチャー”に見舞われトップ10圏外に沈むなど、見せ場なく週末を終えている。

 続く2021年のERC第6戦は、かつてファフェ・モンテロンゴとしてフルターマック・イベントを開催したポルトガル北部を舞台に、ラリー・セーラ・デ・ファフェ・フェルゲイラスとして、今度はポルトガル国内選手権ではおなじみのグラベルステージが舞台となる。民間伝承の神話にも登場するラメイリーニャのビッグジャンプを含むアクション満載の1戦は、約2週間後の10月1~3日に争われる。

終始ポディウム圏内でラリーを進めた地元”10冠”のリカルド・モーラ(シュコダ・ファビアRally2 Evo)は、最後の最後で泣く展開に
名物ステージのSete Cidades 1(24.01km)と、前日も最速としたSSSで2連続ベストを記録したソルドが再び首位に返り咲くなど、シーソーゲームの展開に
ERC-MICHELIN Talent Factoryの最優秀ドライバーにも選出されている期待の新星エフレン・ヤレーナ(シュコダ・ファビアRally2 Evo/Rally Team Spain)が、逆転の3位ポディウムを獲得した
これで勝者アンドレアス・ミケルセンは、選手権でのポイントマージンを34点にまで広げている

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