勝利導く司令塔・狩俣 「流れが悪い時こそ我慢」 TIP OFF 初代ヴェルカの選手たち(2) ガード陣

チームが苦しい時に力を発揮する狩俣=佐世保市、長崎ヴェルカクラブハウス内体育館

 今月19日、長崎ヴェルカ初の公式戦となった天皇杯2次ラウンド5回戦。相手に流れが傾きかけた第2クオーターに4本の3点シュートを沈めるなど、終わってみれば両チーム最多の25得点を記録した。狩俣昌也は司令塔として持ち味の勝負強さを発揮しながら、チームを100点ゲームでの白星発進に導いた。
 2012年にプロ生活をスタートさせ、Bリーグ初年度の2016年からB1の三河で3シーズン、滋賀で2シーズンプレーした。ポイントガード一筋で、昨季は全59試合に先発出場。そんな国内トップレベルで活躍してきた33歳が、B2、B1への最短昇格を掲げるヴェルカの「本気度」に共感した。カテゴリーはB3に落ちるが「一緒にチャレンジしたい」と加入を決めた。
 沖縄県宮古島市出身。小学1年の時、3人の兄姉たちから「シュートフォームがきれい」と褒めてもらったのが忘れられない。興南高3年でインターハイに出場すると、卒業後は国際武道大(千葉)に進学。関東3部リーグで頭角を現し、ここからプロを志すようになった。
 キャリアの中で学んできたのは「流れが悪い時こそひたすら我慢」。焦って難しいプレーに頼らず、ディフェンスで粘り続けて好機につなげる。そんな「チームを勝たせるガード」が理想像だ。
 「僕たちには明確な結果が求められている。それをしっかりやるために集まっている」
 身長178センチのフロアリーダーは、自らの役割をしっかり理解して、実行しにいく。

◎攻守にアグレッシブ 山本

 プレシーズンマッチと天皇杯2次ラウンドの計4試合にスタメン出場した狩俣昌也とともに、攻撃を組み立てていくのが身長174センチの山本エドワード。プロ12年目の35歳は「試合のコントロールやシュート力で貢献したい」と力強い。
 北陸高(福井)2年時の2003年夏、長崎インターハイに出場。翌年は全国選抜優勝大会(ウインターカップ)準Vに貢献した。北陸高伝統の攻守両面でアグレッシブに仕掛けるスタイルを培った。
 クラブのスタートに携わるのは、プロ入りから8シーズンを過ごした現在B1の島根に続いて2チーム目。「まずは長崎の皆さんが楽しんでもらえるようなプレーを」と地域密着を意識するチーム最年長ガードは「後輩にも自分の経験を伝えていく」と先も見据える。
 チームで最も“スリー”を期待されているのが近藤崚太。味方のスクリーンも生かしながら、3点ラインの外でラストパスを待ち、持ち味の「キャッチアンドシュート」で得点を量産する。身長190センチのシューターは自身2季ぶりの公式戦を心待ちにしている。
 一昨年在籍したB3静岡での3点シュート成功率は3割台。シーズン終盤は厳しいマークに遭って調子を落とした。その反省を胸に、今季は当たり負けしない体づくりにも注力。オフの日もシュート練習を欠かさない25歳は「チームメートに打たせてもらっているから、決めるのは当たり前という気持ち。成功率を4割台に乗せたい」と燃えている。
 父親の転勤に伴い9歳で米国に移住した弓波英人は、米プロNBAへの有望選手が集まる全米大学体育協会(NCAA)1部のジョージアサザン大でプレー。卒業後はコーチになろうと考えていたが、オンラインのセミナーがきっかけで伊藤監督と出会った。その後「コーチングも学べる」とヴェルカ加入を決めた。
 スタッフとともに裏方に回ることも多いが、選手としての準備も欠かさない。昨夏は食事と筋トレで体重を8キロ増量。身長169センチと小柄でも「一番小さいから、一番泥くさいプレーをしてチームに活力を与えたい」と準備はできている。

(右から)山本、近藤、弓波

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