「良い米収穫できた」 清水棚田の休耕田を再生 雲仙・千々石

山本さんが休耕地を田起こしした棚田。収穫作業が進む=雲仙市千々石町上岳、清水棚田

 長崎県雲仙市千々石町の中山間地、岳地区にある日本棚田百選の一つ「清水棚田」(上岳地区)では、今春に休耕田の一部で稲作が再開され、黄金色のこうべを垂れた稲穂が収穫期を迎えている。
 岳地区は標高約200~400メートル。下岳と上岳地区に分かれ、手積みした石垣に囲まれた棚田群が有名。上岳地区の中でも、清水川から冷水を引き入れている一帯が「清水棚田」と呼ばれている。
 上岳地区では、過疎化と住民の高齢化で農業の担い手が減り、現在コメを作っている棚田は約120枚(計約400アール)で、最も多かった昭和30年代の3分の1程度。残りの棚田にはハナシバやツバキが植えられたり、休耕地になったりしている。
 「このままでは地域で代々守り続けてきた景観が失われる」と憂慮した住民の一人、山本一也さん(62)が、雑草が茂っていた休耕の棚田3枚(計約14アール)を借りて今年3月に田起こしし、稲作を再開した。
 標高が高い清水棚田は川の水が冷たすぎて、田んぼに水を流し続けると、水温が上がらず稲の育ちが悪くなる。そのため、夜間だけ水を掛け流し、昼間は水をためっぱなしにして日差しで温め、稲を育てている。収穫までに要する期間は低地よりも約40日長く、「稲はその分だけきれいな水と空気を吸って、一段とおいしく育つ」(山本さん)という。
 山本さんは「低地の田んぼと比べると何倍も手間がかかる」と苦笑いするが、「しばらく休耕していたが、代々の土作りのおかげで、良いお米が収穫できている」と満足そう。来年以降も地域住民で協力して復田を続けていく。

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