土砂流入の雲仙・八万地獄 温泉供給再開へ準備進む 休業中の大衆浴場「一日も早く営業を」

源泉から木製容器に流し込まれる温泉=雲仙市、八万地獄

 大雨による土砂崩れで雲仙温泉街(長崎県雲仙市小浜町)の一部の旅館や大衆浴場に温泉供給が停止している問題で、行政や事業者は、配管を仮復旧し供給を再開させる準備を進めている。大衆浴場は住民に欠かせない存在で、一日も早い再開が望まれている。
 8月13日、七つの地獄で構成する雲仙地獄の一つ「八万地獄」に、裏山から崩れた土砂が流れ込み、源泉や配管設備などが埋もれた。この影響で、大衆浴場「湯の里温泉共同浴場 だんきゅう風呂」と旅館3軒への温泉供給が停止。このうち、だんきゅう風呂と旅館2軒が休業し、残りの1軒も水を沸かして営業を続けている。
 本格復旧に向けた八万地獄の土砂除去は長い期間を要するため、地獄を管理する環境省のほか、市と旅館関係者らで応急措置を協議。土砂の隙間からあふれ出た温泉を、いったん木製容器にため、ろ過して供給できないか検証を進めている。既に容器への配管は完了。今後は各施設までつなぎ、十分な湯量を確保できるか確認する。
 住民は日常的に大衆浴場を利用。自宅に風呂がなかったり、長く使っていなかったりする家庭も少なくない。だんきゅう風呂の休業に伴い、住民は温泉街にある他2軒の大衆浴場を利用。同市内で約13キロ離れた小浜温泉街の旅館11軒からは、無料入浴券が届けられた。
 だんきゅう風呂を運営する共同組合の品川逸郎組合長(68)は「小浜温泉街の支援に感謝している。ただ、やっぱり通い慣れた温泉に漬かった方が身体が休まる。一日も早く営業再開させたい」と希望する。
 八万地獄周辺の旅館は、地獄に水を送って噴気で温め、旅館に戻して浴室シャワーなどに使う「燗(かん)つけ」の恩恵も受けてきた。だが、その設備も土砂災害で使えなくなり、再開時期の見通しは立っていない。

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