新総裁は岸田氏

 気圧の配置を表す「西高東低」をもじった「政高党低」という造語がある。首相、官邸の影響力が強く、与党の力が弱いことで、自民党政権が長くなるほど、「党低」を嘆く議員の声は音量を増してきた▲このありさまをどう思うか、と問われて、党総裁選に立った岸田文雄氏は政府も党も力を持つ「政高党高であるべきだ」と答えた。河野太郎氏は、国会で説明責任を果たすのは政府だから「政高党低じゃないと困る」と、逆だった▲河野氏の言い分にも一理あるのだろうが、党は党で政策を打ち出す能力を高めるべきだ、という岸田氏の「党高」論は、なにも自民党に限らず、道理ではある▲その岸田氏が新しい党総裁に選ばれた。来週には首相に就き、その先には衆院選がある。近づく選挙をにらんで、4人が立った総裁選は政策をぶつけ合う場面が際立った▲「勝ち馬に乗る」とか「大物が影響力を保つ」とか、議員票には不穏な動きがちらついたが、論戦を見る限りでは「党高」とも言えただろう▲疑問に答えない、話をはぐらかす-と、聞く耳をどこかに忘れたような安倍政治・菅政治が「政高」の行く末ならば、岸田氏は場面転換できるのかどうか。「特技は人の話を聞くこと」という人には、誠意をもって語り掛け、説明を尽くすべきことも山ほどある。(徹)

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