菅首相 退陣へ 長崎県内政界の反応 与党は実直さ評価 野党「責任放棄」

 菅義偉首相が辞意を表明した3日、長崎県内の与野党関係者にも驚きが広がった。与党からは実直な働きぶりを評価し「残念」との声が聞かれ、野党からは新型コロナウイルスの感染拡大が続く時期での辞任に「責任放棄」との批判が上がった。次期衆院選を控える各陣営は“風向き”を注視する。
 自民党内の思いもさまざま。今期限りでの引退を表明している加藤寛治衆院議員(長崎2区)は、長崎空港から地元に戻る車中でテレビニュースにくぎ付けになった。「党や衆院選の態勢を築くにはどうすれば一番いいのか、自分なりに熟慮したのだろう」とおもんぱかった。
 北村誠吾衆院議員(長崎4区)は「全ての仕事を一生懸命やっているのに本人が意図する結果が出なかった。本当に気の毒。同情するに余りある」とし、谷川弥一衆院議員(長崎3区)は「菅首相が官房長官の時に国境離島新法の制定で大変お世話になった」と述べ、惜しんだ。
 医師でもある冨岡勉衆院議員(比例九州)は「(首相が)コロナの現場の実態を理解できていなかった。知識不足のまま国民に説明しても、うまく伝わらないのは当然だろう」と厳しい言葉を選んだ。
 菅首相は総裁選不出馬の理由を「コロナの感染防止に専念するため」とした。同党県連の山本啓介幹事長は「国の危機的状況の中で尽力してきた総理。判断は理解できる」、連立与党の公明党県本部の川崎祥司幹事長も「対策の専念は適切な判断」と受け止めた。
 一方の野党。国民民主党の西岡秀子衆院議員(長崎1区)は「最高責任者としての責任を放棄されたと受け止めざるを得ない」と批判。立憲民主党県連の赤木幸仁幹事長は「この1年のコロナ対策が失敗だと認めているようなもの」、共産党県委員会の山下満昭委員長は「多くの国民の声に押された退陣だ」と切り捨てた。
 次期衆院選で戦う“顔”が替わることになり「野党にとっては菅さんのほうが戦いやすかった」と社民党県連の坂本浩幹事長。長崎2区に出馬を予定する立憲民主党の松平浩一衆院議員(比例北陸信越)は「失策への批判を追い風にして、有権者に支持を訴えていく」とし、国民民主党県連の深堀浩幹事長は「右往左往せず必要な政策、思いを伝えていくに尽きる」と冷静にみている。
 長崎1区に自民党候補として出馬予定の初村滝一郎氏は「新しい総裁の下で選挙を戦うが、これまで通り長崎のために尽くす思いを伝えていくだけ」と強調。陣営関係者からは「党への逆風が少し和らぐのでは」との期待も漏れた。

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