母への思い昇華 遠藤周作 没後25年で企画展 日記や直筆原稿など展示

草稿など展示物に見入る来場者=長崎市遠藤周作文学館

 長崎県ゆかりの作品を複数残した作家遠藤周作(1923~96年)が死去して今年で25年。命日にあたる29日、長崎市東出津町の市遠藤周作文学館(松村康史館長)で節目を記念する企画展が開幕した。会期は2023年3月24日まで。
 企画展のリニューアルは約1年2カ月ぶり。タイトルは「遠藤周作 母をめぐる旅-『沈黙』から『侍』へ」。母・郁の影響を強く受け、生涯にわたり「母性的なキリスト教」を探求し続けた遠藤が、母への思いをどのように作品に昇華させていったのか、日記や書簡、直筆原稿の推敲(すいこう)の跡などを手掛かりに迫っている。
 会場には「沈黙」「侍」の直筆原稿をはじめ、昨年、同館で発見された「影に対して」の草稿、「死海のほとり」の執筆過程を知ることができる日記や仕事部屋に飾られていた愛蔵品など約80点を展示。遠藤の生い立ちや作品執筆の背景を解説するパネルも設置されている。
 川崎友理子学芸員(28)は「主要な作品にスポットを当てた。没後25年を経ても読み継がれる作品の魅力を感じてほしい」とPR。同館を初めて訪れた長崎市赤迫2丁目、無職、松本和久さん(62)は「展示物から遠藤の温かい人柄に触れることができた。これをきっかけにいろんな作品を読んでみたい」と話した。

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