ジャズで佐世保を盛り上げたい! 密避け野外ライブ実現 前田和隆さん

ジャズスポット「いーぜる」のオーナーも務める前田さん。新型コロナ対策で、空調設備を整えた=佐世保市下京町

 新型コロナウイルスの影響で活動が制限された音楽シーン。「ジャズの街」といわれる佐世保も例外ではない。そんな中、音楽で地元を盛り上げたいと模索しているのが、長崎県佐世保市の国際運輸代表取締役社長、前田和隆さん(60)だ。会社経営の傍ら、昨年から野外フリーライブのイベント企画や同市のジャズスポット「いーぜる」のオーナーを務めている。
 「音楽がないと生きていけない」。そう語る前田さんは中学生のころ、親戚に中古ギターを譲ってもらったことがきっかけで、ギターに夢中に。高校生になると、大人の世界をのぞき見るため、ジャズの発信拠点「いーぜる」に友人と通った。
 21歳のとき、特に具体的な目的もなく上京した。東京見物の気分で1カ月程度滞在するつもりだったが、気付けば15年たっていた。その間、東京で気の合う仲間と出会い、4人組のロックバンドを結成。12年間活動していたが、家業を継ぐため、36歳で佐世保に戻った。
 佐世保に帰っても、音楽は続けた。当時、市内にあったカフェバー「アドベンチャー」で、多くの米国人ジャズミュージシャンがセッションを繰り広げていた。前田さんも毎週月曜日の仕事終わりにそこに混じって、ギターをひいた。「いーぜる」にも頻繁に通い、ジャズに触れた。2013~15年には、県内外のジャズ演奏家が集う「佐世保JAZZ」に出演。その後、実行委員としてイベントに携わるようになった。
 ジャズをさらに市民に浸透させたいと思っていた矢先、ショックな出来事が相次いだ。30回目を迎えようとしていた「佐世保JAZZ」は、新型コロナの影響で昨年、今年と中止に追い込まれた。さらに昨年5月末、「いーぜる」マスターの百合永貴(ゆりながたかし)さんが60歳で亡くなった。
 音楽シーンを止めてはいけない。そして、誰かが店を継がないといけない-。そんな使命感が前田さんを動かした。昨年、佐世保港近くで演奏する「海辺のコンサート」を企画し、密を避けたジャズライブを実現。昨年10、11月、今年4、5月の4カ月間で約20回開いた。感染対策をしながらの開催だったが、お客さんも演奏者も高揚感を得られ、評判は上々だ。昨年10月には、「いーぜる」を国際運輸が運営することにし、前田さんはオーナーとなった。感染対策のための空調設備を整え、人数制限をしながら、プロのミュージシャンを受け入れている。
 音楽は「不要不急」とされ、世の中の空気が冷ややかに感じた。「音楽ができなくなると、心の栄養失調になる。音楽も『不要不急』と一緒くたにされると困る」と胸の内を明かす。「ジャズのライブでは、叫ぶ人はいない。感染対策の規制を守りながらライブを続けたい」
 コロナが収束すれば、旅行客の要望に合わせたライブを開くなど、店の新しい運営方法も考えている。「佐世保にいつ来ても、音楽を聴ける街にしたい」。前田さんは、これからも大好きな音楽とともに生きていく。
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 「佐世保JAZZ 海辺のコンサート」(佐世保ジャズ実行委主催)は10、11月の毎週日曜午後1時~4時に新港町の岸壁で開く。毎回4~6組が演奏する。観覧無料。

「海辺のコンサート」の様子=2020年11月末、佐世保市新港町(前田さん提供)

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