ラーメンや締めさば「冷凍自販機」登場 コロナ禍 飲食業の新たな在り方

冷凍自販機を紹介する酒見さん=佐世保市、ささいずみ(写真左)、商品を手に冷凍自販機を紹介する川尻さん=佐世保市、MARU龍

 新型コロナウイルス禍での厳しい状況を打開しようと「冷凍自販機」を設置した飲食店が長崎県佐世保市内にある。ラーメンや締めさばなど、これまでは自販機と結び付かなかった食品の販売に取り組む2店に話を聞くと、ウィズコロナ時代における、新たな飲食業の在り方が見えてきた。

 住宅地が広がり、ファミリー層や大学生が多く住む同市広田3丁目。その一角にラーメン店「MARU龍」がある。同店はコロナ禍で、売り上げが例年の3分の1にまで落ちた。オーナーの川尻健勇さん(31)は「昨年は時短営業要請の有無で客足に変化があったが、今年は関係なくずっと低迷。徐々に悪くなっていた」と話す。
 コロナが広がり始めた昨年4月ごろからテークアウトの商品開発に着手。だが、汁物のテークアウトは手間がかかり、作り置きをすると食品ロスが増加。約1年、試行錯誤を重ね「冷凍での提供が客にも店にも良い」という結論に至った。
 テークアウトの商品開発用に借りていた施設で冷凍食品を生産。7月末に冷凍自販機を設置した。不安もあったが予想以上の売れ行きで、「テークアウトの約10倍出る。生産が追いつかない時もある」という。24時間販売可能で、外出制限がある人でも気軽に買うことができる。時短要請の影響も関係なく一定の利益が見込める。商品は1カ月持つため食品ロスも改善した。
 “メニュー”は、3種のラーメンと刻みチャーシュー。外国人客が多かったため、英語対応もしている。川尻さんは「うちにとってはテークアウトの進化が冷凍自販機だった。挑戦してよかった」と笑顔を見せる。

 市中心部の四ケ町アーケード近くにある同市下京町の居酒屋「ささいずみ」。同店を運営する「クオリム」(同市)の専務取締役、酒見千紗さん(41)は「コロナ禍では飲食店に行くこと自体怖いという雰囲気がある。売り上げは例年の半分以下」と現状を話す。時短要請などが無い時期も団体客が戻ってくることはなく打開策が必要だった。
 そこで、コロナ禍前から検討していた冷凍自販機を「今でしょ」ということで導入決定。8月10日に設置した。
 元々冷凍で販売していた商品を中心に冷凍自販機で売り始めた。現在のラインアップはギョーザや締めさば、茶わん蒸し、ホールのガトーショコラケーキなど。茶わん蒸しは冷凍自販機用に開発した。
 売れ行きは「思った以上」にあるという。人気はギョーザと茶わん蒸し。今後増設も検討しており、「自販機は非対面なので安心して買ってもらえる。こちらも『店に足を運んでください』と言いやすい」と酒見さん。「これまでは自販機といえばジュースを買うくらいだったが、今後はお店に行く、くらいの感覚で選択肢の一つになっていくのでは」と分析している。

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