新学期スタート 長崎県内の学校現場 コロナ対策、安全と学びの両立に腐心

放送室前の廊下から、各教室の生徒に校内放送でメッセージを伝える川本校長=長崎市立東長崎中

 新型コロナウイルス感染第5波のさなか、長崎県内多くの学校が1日、新学期や授業再開を迎えた。10代以下の感染も増える中、学びと安全をどう守るのか-。学校現場は警戒を一層強めており、校内クラスター(感染者集団)や、不安を募らせる保護者が子を休ませる「自主休校」など、あらゆる事態を想定して対策を進める。
 「心配はあるが、学校に通う中での発育は今しかできない」。佐世保市原分町の市立大野小(松田美穂校長、700人)に長男を送り届けた父親(39)は複雑な心境を明かした。同市立校は2学期制で、この日、前期後半の授業がスタート。音楽の授業では児童が黒板を向き、前に人がいない状態で歌う対策を取った。
 全国的には自主休校を選ぶ家庭が少なくない。大野小でも一部の保護者から「感染が心配」と連絡があり、事情を聞いて、その子どもを出席停止扱いにした。松田校長は「友達や先生と関わりながら学んでほしいが、それぞれの不安に寄り添わないと」と語る。
 県によると、7月から続く第5波では感染者の約3割を10代以下が占め、第4波(4~6月)の1割程度から大きく増えた。
 長崎市矢上町の市立東長崎中(川本哲也校長、770人)では1日、校内放送でリモート始業式を実施した。自主休校の相談はなかったが、感染者や休み希望者が増えた場合に備える。タブレット端末を使って自宅で学習できるよう各家庭のWi-Fi環境の有無を調査。8月末からは、教員同士でビデオ通話システムの使い方を教え合う研修会を開いている。
 同市内では9月下旬から12歳以上のワクチン接種が始まる。川本校長は「接種する、しないで差別が起きてはいけない。副反応で休む生徒が出た場合の対応も万全にしたい」。
 まん延防止等重点措置の区域指定に伴い、同市立校の部活動は原則中止。9月中旬の新人大会に向け、1日から一時的に練習を再開した東長崎中ソフトテニス部2年の赤司宙聡さん(13)は「1人で走ったり素振りをしたりしていた。まだ練習ができない部活もあるので(再開に)感謝したい」と語った。
 感染状況が落ち着いている離島の新上五島町立有川小(近藤嘉浩校長、149人)でも警戒は緩めていない。始業式は体育館に集まらず、児童が各教室で近藤校長のあいさつを聞いた。修学旅行など行事が多い2学期を迎え、「行事を全て自粛にはしたくない。他校とも情報交換して判断したい」と話した。

音楽の授業で黒板の方を向いて歌う児童=佐世保市立大野小

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