【おんなの目】 ストライプのワンピース

 九月はバーゲンの季節。夏物が半額、最大70%引きになったりする。憧れの服が手に入るチャンスの九月。近所にブティックAがある。六月初旬、レンガ色の人差し指の太さのストライプのワンピースを着たマネキンがショーウインドウに現われた。九頭身のスタイルでしなを作って立っている。裾が広がる軽やかなライン。見惚れた。

 難点がある。ノースリーブなのだ。マネキンの褐色の腕はつるりとしているが私の腕には縮緬皺がある。上腕には、渚に寄せる波が作るような細かい波紋の皺が見事にできる。隠したい。

 九月、憧れのワンピースに「半額」の札が下がっていた。それに茶色の薄い長袖の上着を着ているではないか。二の腕が隠れている。素敵。

 値段が気になる。半額といっても元値がわからない。店の中を見たら誰もいない。中に入りワンピースの値札を探した。見当たらないのでマネキンの身体を探った。襟首から手を入れた。ない。失礼と言って裾をめくり服の脇を見た。ない。ない。マネキンの冷たい固い乳房にもちらりと触った。青い林檎のような硬い乳房。くびれた腰に肉のない腹。値札はポケットの中にあった。五万円が三万円。上着は八千円。縮緬皺を隠すのに三万八千円・・・。最後の問題。着ていく場所がない。諦める妙薬である。

© 株式会社サンデー山口