今季始動の電動クラス『RX2e選手権』第4戦スパに、3名の実力派女性ドライバーがエントリー

 2022年からの導入が予定される電動最高峰“RX1e”クラス初年度より一足早く、今季2021年からWorldRX世界ラリークロス選手権との併催でスタートした『FIA RX2e選手権』ことワンメイク電動ラリークロス車両の“RX2e”クラス。その最終戦から1歩手前となる10月9~10日開催の第4戦ベルギーに向けエントリーリストが正式発表され、スパ・フランコルシャンに設定される特設サーキットには3名の女性ドライバーがグリッドに並ぶことがアナウンスされた。

 来季2022年より電動化を果たす最高峰カテゴリーRX1eへの入門カテゴリーに位置付けられ、スペースフレームシャーシを中心に30kWhのバッテリーと2個の独立したモーターによる250kW(約340PS)/510Nmのパワートレインを組み込んだ“ポケットロケット”ことRX2e初のシリーズ戦は、ここまでWorldRXとの併催で全3戦を消化してきた。

 このRX2eのマシンは既存のRX2インターナショナル・シリーズで使用される内燃機関搭載のスーパーカー・ライト車両にとって代わるもので、スペインの電動機構サプライヤーであるQEVテクノロジーズと、スウェーデンの名門ビルダーであるオルスバーグMSEによって製作された。

 その初年度はベルギー出身のギヨーム・デ・リデルが、RX2時代からのライバルでもあるイェッセ・カリオとのタイトル争いを展開しており、アルピーヌF1チームのパワーユニット・パフォーマンス・エンジニアの顔も持つデ・リデルが、地元戦を前に7点差をつけてスタンディング上のアドバンテージを維持している。

 さらにイギリス出身のパトリック・オドノヴァンや、スペインのパブロ・スアレスなど台頭を見せる若手有望株も参戦中で、とくに前戦で初表彰台を獲得したオドノヴァンは若干17歳ながらすでに才能を開花させつつあり、北米出身の実力者コナー・マテルらを含めハイレベルなコンペティションが展開されている。

 今回そうした強力なレギュラー陣に挑むこととなった3名の女性ドライバーには、クララ・アンダーソン、クリスティーナ・ジャンパオリ・ゾンカ、そしてライア・サンズの名がリストアップされ、スパのグリッドに参加することが正式に決定した。

 スウェーデンのジュニア・ナショナルチームのメンバーでもあるアンダーソンは、7歳でカートを始めると複数の地域選手権でタイトルを獲得し、2018年よりラリークロスに転向。現在21歳でFIA世界自動車連盟のラリースターアンバサダーも務める彼女は、2020年にはBMW 120iをドライブして地元スウェーデンのジュニア・ラリークロス選手権でランク2位を獲得。そして今季2021年には晴れてスウェディッシュ・ラリークロス選手権チャンピオンに輝いた。

「スパでRX2eのマシンをドライブできること、そして私のキャリアの次のステップが、どういう展開になるかを理解することは本当に素晴らしいことね」と、世界選手権併催戦へのデビューに向け喜びを語るアンダーソン。

「RX2eはこのスポーツの将来的な方向性について、興味深い洞察を提供してくれる楽しい新シリーズのようね。そこに参戦できるというだけで、私は本当に……この上ない興奮を感じている」

「ラリークロスこそ私の人生、情熱そのもの。好きなことをより持続可能な方法で実行できれば本望よ。パドックで自転車に乗っていた少女の頃から、FIA世界ラリークロス選手権のイベントに参戦することを夢見てきた。伝説のスパ・フランコルシャンでその夢を実現できるなんて、これこそ一生に一度のチャンスね!」

初年度はベルギー出身のギヨーム・デ・リデルが、RX2時代からのライバルでもあるイェッセ・カリオとのタイトル争いを展開
2021年に晴れてスウェディッシュ・ラリークロス選手権チャンピオンに輝いたクララ・アンダーソン

■クリスティーナGZとサンズは、ともにエクストリームEに参戦中

 一方、こちらも2021年に新シリーズとして幕を開けた電動オフロード選手権『Extreme E(エクストリームE)』にイスパノ・スイザ・XITEエナジー・チームからエントリーする“クリスティーナGZ”ことクリスティーナ・ジャンパオリ・ゾンカは、WRC世界ラリー選手権や世界的に有名な『バハ1000』などすでに豊富な経験を持ち、地元スペインのオフロード・チャンピオンシップでは選手権リーダーとしてシリーズを牽引している。

 そんな現在27歳のイタリア系スペイン人の“GZ”は、開幕前の事前テストに続いてアルデンヌの森で開催される本戦イベントにて”RX2e”車両のコクピットに戻ることが決まった。

「私自身、これまでラリークロス競技の本格的な経験はないけれど、このイベントを心から楽しみにしている。このクルマをテストしたときには、本当に楽しかったし、驚かされた。その軽さゆえに凄まじく印象的な加速力を味わわせてくれたの」と、現在は最高出力470kW(約640PS)、最大トルク920Nmを発生しながらも、車両総重量1650kgもの巨漢を操るクリスティーナGZ。

 同じくそのワンメイク電動SUV『Odyssey 21(オデッセイ21)』のステアリングを握り、帝王カルロス・サインツとのペアでエクストリームEに参戦中のダカールラリー“2輪の女王”ことライア・サンズも、6年前に地元バルセロナ戦でシリーズ前身となるRX Lites(RXライト)のマシンで競技デビューを飾って以来の同カテゴリー参戦となる。

「こうしてFIA RX2eチャンピオンシップに参戦し、ラリークロスに出場するチャンスが得られたのは本当に光栄なこと。私はまだこの4輪の世界の初心者だから、学校に戻った気分でいるの。対戦相手との接触や他のマシンと同時に走ってバトルをする状況に慣れていないから、非常に興味深い経験になるでしょうね」と、14回のFIM女子トライアル世界チャンピオンと5回のFIM女子エンデューロ世界チャンピオンに加え、11回のダカールラリー参戦経験を持つサンズ。

 今季からチャレンジ中の電動オフロード選手権では、アクシオナ・サインツXEチームで“帝王学”を学び、すでに表彰台も獲得しているサンズだが、そんな万能型女性ドライバー兼ライダーも「今回は楽しむことが目標」と控えめな言葉を口にした。

「学ぶ機会とラップ数があまりないけれど、可能な限り迅速に学んで速く走る必要がある。スパには良い思い出がいくつかあって、何度かトライアルレースに出場したの。ここは象徴的な会場だし、ふたたび競争に参加できるのは本当に素晴らしいこと。私の主な目標はそれを楽しむことね!」

電動オフロード選手権『Extreme E』に参戦中の“クリスティーナGZ”ことクリスティーナ・ジャンパオリ・ゾンカ
現在27歳のイタリア系スペイン人のクリスティーナGZのみ、開幕前の事前テストを経験している
帝王カルロス・サインツとのペアで『Extreme E』に参戦中のダカールラリー“2輪の女王”ことライア・サンズ
「学ぶ機会とラップ数があまりないけれど、可能な限り迅速に学んで速く走る必要がある」とサンズ

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