鷹、痛恨ドローでCSも危うい 大砲リチャードにバント…指揮官が託した“二者択一”

ソフトバンク・工藤公康監督【写真:藤浦一都】

「本人に右打ちがいいか、バントがいいか、聞いたら『バント』だと言った」

■ソフトバンク 7ー7 楽天(5日・PayPayドーム)

ソフトバンクは5日、本拠地PayPayドームで3位の楽天と対戦し、7-7で引き分けた。中盤までリードを奪っていたが、7回に岩嵜がつかまり逆転を許した。なんとか引き分けに持ち込んだものの、3位楽天を3ゲーム差で追いかける状況では負けに等しいドローだった。

先発の東浜が初回に浅村にソロを浴びて先制されたものの、その裏に中村晃が満塁弾を放って逆転。2点差に詰め寄られた5回に再びリードを広げ、あとは逃げ切るだけだった。歯車が狂い始めたのは6回の攻防。3番手の板東が渡邊佳にソロ本塁打を被弾し、1点差に。その後も続いたピンチは嘉弥真が凌いだが、その裏の攻撃が痛かった。

先頭の今宮が左中間を破る二塁打で出塁。ここでリチャードへと打順が巡った。ベンチの采配はバント。今季1軍でも2軍でもバントを決めていない大砲は初球、2球目と失敗してファウル。追い込まれると、3球目のストレートで空振り三振に倒れた。その後、甲斐が四球を選んで1死一、二塁となったが、牧原大、代打・川島と凡退。嫌な空気が漂った。

なぜ、長打が売りのリチャードにバントだったのか? 試合後、工藤公康監督をこの場面をこう振り返る。

「なかなかバントというケースはないんですけども、本人に最初から右打ちがいいか、バントがいいか、聞いたら『バント』だと言ったので。自分が選んだ方でいった方がより確実かなと思ったんですけど。あそこで代える選択肢はなかったので」

前回登板で救援に失敗し、配置転換も示唆していた岩嵜だが…

打席に向かう直前、ネクストバッターズサークルにいたリチャードはベンチに呼び戻された。そこで首脳陣から「右打ち」か「バント」かの選択肢を与えられ「バント」を選んだという。以前には、リチャードについて「ブンブン振ってくれればいい」と話していた指揮官だが、追加点を狙った策が裏目に出た形になった。

1点リードのままで迎えた7回。嘉弥真が1死を奪ってから、ベンチがマウンドに送ったのは岩嵜だった。1日のオリックス戦で救援に失敗し、敗戦投手となっていた右腕。指揮官はセットアッパーからの配置転換の可能性も示唆していたが、この日も7回を託した。「後ろの3人が安定してくれると、そこにいくリリーフも楽。いい形が出れば、もっと良くなると思うんですけど」。7、8、9回の安定を取り戻すために送り込んだが、これも裏目となった。

先頭のオコエは空振り三振に仕留めたものの、この時から状態の良くなさは明らかだった。フォークは抜けるボールが多く、ストレートは引っ掛け気味。渡邊佳に中前安打、炭谷に四球を与えると、山崎剛に左中間を破る適時打を浴びて同点。さらに岡島にも右前2点適時打を許し、試合をひっくり返されたのだった。

7回に栗原、8回には前の打席でバントに失敗していたリチャードがソロを放ち、同点に追いついたものの、追う立場である以上、引き分けは痛い。工藤監督は「勝ち切れなかったところはありますけど、良く打者の人たちが意地を見せて、良く打ってくれたと思います。みんな一生懸命やった結果なので、負けているわけではないので、明日もう1歩前に進んでいけるんじゃないかと思います」と前向きに語ったが、3ゲーム差が変わらなかったという現実は重そうだ。(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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