首位快走のダニ・ソルドはトラブルに散る。アンドレアス・ミケルセンが盤石の連勝劇/ERC第6戦

 10月1~3日にポルトガル北部のグラベルステージを舞台に争われた、2021年ERCヨーロッパ・ラリー選手権第6戦ラリー・セーラス・デ・ファフェ・フェルゲイラスは、2戦連続の助っ人起用となったチームMRFタイヤのダニ・ソルド(ヒュンダイi20 R5)が大量リードを築きながらも、初日最終ステージで戦列を去る波乱の展開に。代わってラリーを率いた選手権リーダーのアンドレアス・ミケルセン(シュコダ・ファビア・ラリー2エボ/トクスポーツWRT)が、現ERCチャンピオンのアレクセイ・ルカヤナク(シトロエンC3ラリー2エボ/サンテロック・ジュニア・チーム)との熾烈なタイムバトルを制して2連勝を飾っている。

 サンミゲル島で開催された第55回アゾレス・ラリーに続き、ポルトガル連戦となった第6戦は、雨、風、泥、そしてペースアップを阻む霧が立ち込めるタフなコンディションで幕を開けた。そんな厳しい条件が組み合わさったレグ1は、数多くの実力者たちがトリッキーな罠に沈む“消耗戦”の様相を呈した。

 その筆頭となったのが2戦連続ERC参戦のソルドで、インド製タイヤの開発チームに“ワールドレベル”のフィードバックをもたらすことが期待されたWRC世界ラリー選手権ウイナーは、SS2からの3連続ベストを勝ち獲り、午前のループを終え28.9秒ものマージンを稼ぎ出す。

 しかし続くSS5でタイヤにダメージを負い貴重なタイムを失うと、この日最後のSS8で事態はさらに悪化し、ステアリング系統のトラブルでフィニッシュまで残りわずか1kmの地点でクラッシュ。チームMRFタイヤにとって期待高まるスピードを披露しながらも、ここでラリーを終えることとなってしまった。

「僕らはそれ以前からすでにいくつかの問題を抱えていた。ステアリングが壊れた途端に、コースから飛び出す羽目になったよ」と、明けたレグ2では復帰組に回ることとなったソルド。

 同じくこのSS8では5度のルーマニア王者シモン・テンペスティーニ(シュコダ・ファビア・ラリー2エボ)も、SS7でのオーバーシュートに続いてステアリング破損によりストップ。同じくERCミシュラン・タレント・ファクトリーの最優秀ドライバーにも選出され、前戦では3位表彰台も獲得した期待の新星エフレン・ヤレーナ(シュコダ・ファビア・ラリー2エボ/ラリー・チーム・スペイン)もSS6でクラッシュしてリタイヤを喫するなど、上位勢からはコンディションに対し「難しすぎる」との声が聞こえる過酷な状況となった。

 そんななか、しぶとく生き残ったのが首位浮上のミケルセンと2番手のルカヤナクで、ふたりはわずか4.4秒のタイム差で初日の8ステージ、113.42kmを走破してみせた。

アゾレス・ラリーに続き、2戦連続のゲスト参戦となったTeam MRF Tyres(チームMRFタイヤ)のダニ・ソルド(ヒュンダイi20 R5)
このイベントから新型ヒュンダイi20 Nラリー2を投入したブルーノ・マガラエスは4位に
ポルトガル選手権リーダー兼昨年の同大会覇者でもある大ベテラン、アルミンド・アラウージョ(シュコダ・ファビア・ラリー2エボ)
レグ1のステアリング破損でラリーを終えたソルドだが、2日間で7ステージを制覇するなど光る速さを披露した

■ミケルセン「クルマは週末を通してとても信頼できた」

「グリップはつねに変化していて、とても厳しい初日だった。コースに留まれるかを判断するのは非常に困難な作業だったよ」と、自身もSS4で右リヤタイヤのダメージで遅れを喫したミケルセン。

「最終ステージは路面がとても荒く、轍も深くてマシン(のラジエーター)が泥で満たされてしまうのではないかと心配していた。もっと速く走れたかもしれないが、もう一度パンクしたくなかったから、安全なドライブを心掛けたよ」

 2番手ルカヤナクの背後3番手には、SS3でのビッグスピンを経てSS8の終わりにはマシンの水温が140℃に達するなど、ギリギリの戦線をくぐり抜けたポルトガル選手権リーダー兼昨年の同大会覇者でもあるアルミンド・アラウージョ(シュコダ・ファビア・ラリー2エボ)が続き、さらに13.5秒差の4番手には国内選手権のライバルでもあり、このイベントから新型ヒュンダイi20 Nラリー2を投入したブルーノ・マガラエス、さらにオーバーヒートでの減速を余儀なくされたニル・ソランス(シュコダ・ファビア・ラリー2エボ/ラリー・チーム・スペイン)の続くトップ5オーダーとなった。

 前日とは対照的に快晴が広がったレグ2は、オープニングのSS9からステージトップ3のタイム差が0.9秒という超接近戦が展開されると、SS10ではマシン修復組となったソルドがふたたびのトップタイムを奪ってみせる。

 すると、首位ミケルセンに喰い下がっていたルカヤナクのシトロエンに異変が起こり、午後のループに入ったところでフロントのドライブシャフトが破損して大きく遅れてのフィニッシュに。しかし、ここからなんとか粘ったルカヤナクは最終的に首位から2分以上も遅れたものの、アラウージョとマガラエスの前で全16ステージを走破することに成功。

 一方、ライバルの消えたミケルセンがタイトル争いで優位に立つポルトガル戦連勝を手にすることとなった。

「アレクセイと最後まで戦えなかったのは残念だが、この週末には本当に満足している。昨日は本当に過酷なコンディションだったけど、クルマは週末を通してとても信頼でき、運転する喜びを味わえる素晴らしい経験ができた」と笑顔を見せたミケルセン。

「トラブルを極力回避して必要なところでプッシュした。それが今回の成功の秘訣かな」

 一方、SS10に続いて午後もSS14から“上がり3ステージ”で連続ベストを記録したソルドは、2日間で7ステージで最速を刻み、チームに貴重なデータをもたらしている。

 いよいよ終盤戦に突入する2021年のERCは、第9戦でひさびさのターマックラリーに回帰。速くて狭いセクションを特徴とする舗装路に対し、2019年は雨と泥のハードルが加わった難しいイベントでもあるラリー・ハンガリーが、10月22~24日に同国北東部のニーレジュハーザを中心に争われる。

レグ2でフロントのドライブシャフトが破損し大きく遅れるも、なんとか2位を獲得した現ERCチャンピオン、アレクセイ・ルカヤナク(シトロエンC3ラリー2/Saintéloc Junior Team)
ラリーリーダーに立ったアンドレアス・ミケルセン(シュコダ・ファビア・ラリー2エボ/Toksport WRT)は、レグ2でも4ステージで最速を奪った
初日のオーバーヒートでペースダウンを余儀なくされたニル・ソランス(シュコダ・ファビア・ラリー2エボ/Rallye Team Spain)は5位
スタンディングスでも、勝者アンドレアス・ミケルセンが71点リードと、独走体制を築いた

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