なぜ三嶋でなく伊勢だったのか? DeNA三浦監督、セーブ場面での起用に込めた思い

DeNA・三浦大輔監督【写真:荒川祐史】

山崎も登録抹消され「流動的」な守護神の座

■中日 4ー2 DeNA(9日・横浜)

セ・リーグ最下位のDeNAは9日、本拠地・横浜スタジアムで行われた中日戦に2-4で逆転負け。勝利すれば中日を抜き、9月25日以来14日ぶりの5位浮上だったが、1点リードの9回を2年目右腕・伊勢大夢投手に託したことが裏目に出た。三浦大輔監督のその起用には、来季も見据えた意図があった。

先発の京山将弥投手が7回まで101球を投げ5安打無失点の快投。2点リードの8回には、2番手として登板したエドウィン・エスコバー投手が代打のA・マルティネスに2号ソロを浴びるも、1点のリードが残った。

そして9回、三浦監督は伊勢を投入する。伊勢は今月3日の巨人戦で1点リードの9回に登板し、2死二塁から大城に右翼フェンス直撃の同点二塁打を浴びて逃げ切りに失敗。それ以来、中5日が空いていた。

DeNAの守護神は今季、昨季途中から引き続いて三嶋一輝投手が務めていたが、9月に入ってから不振で山崎康晃投手へ替わった。しかし山崎も3試合連続計6失点と炎上し、今月1日に登録抹消。以降、三浦監督は守護神の座を「流動的」としていた。

この日、ブルペンにはまだ三嶋が残っていた。三嶋は今季の巨人戦は11試合に登板して計12失点、対戦防御率11.17とコテンパンにされ、守護神の座から陥落したとはいえ、中日とヤクルトに対してはいまだに自責点0。前日8日の同カードでも6点リードの9回に登板し、無安打2奪三振無失点と完璧な投球を披露していた。無難に勝利を狙うなら、三嶋の方が確率が高かったのではないか。

しかし、三浦監督は伊勢に対して「接戦のプレッシャーが掛かる場面でも、本来のボールを投げられるようになってほしい」という思いを抱いていた。ルーキーイヤーから昨季途中までクローザーを務め続けてきた山崎には勤続疲労がうかがえ、三嶋もプロ9年目の31歳。そこで球威のある23歳の伊勢に、リリーバーとしてレベルアップしてほしいと高い期待をかけている。

「勝ちにつなげられなかったのは監督の責任」

この日の伊勢は、最速150キロを計測したストレートは走っているように見えた。だが、先頭の福田にフォークを右前打され、続く高橋周には内角高めの速球を詰まりながら右前へ運ばれ、無死一、三塁。代打・渡辺には真ん中に浮いたフォークを右前適時打されて同点に追いつかれ、結局打者3人でマウンドを降りた。2試合連続のセーブ機会失敗である。

4番手の砂田毅樹投手も1死満塁から京田に一塁強襲の勝ち越し2点適時打を許し、最後は三嶋が登板して後続を断った。

三浦監督は「勝ちにつなげられなかったのは監督の責任」とした上で、「伊勢はああいう場面で投げてもらわないといけない投手。使っているのはこっちなので、思い切って投げて、乗り越えてほしい」と語った。

DeNAの今季残り試合はわずか11。4位広島には3ゲーム差で望みがあるが、Aクラスの3位・巨人には10ゲームの大差をつけられている(9日現在)。目先の勝利にこだわりつつ、来季のチーム編成も視野に入れて起用を考えなければならない時期だ。指揮官は「あの屈辱があったからこそ成長できた」と笑える日が伊勢にやって来ることを信じている。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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