DeNA三浦監督の信頼を掴んだ4年目野手 オースティン離脱でスタメン定着なるか?

DeNA・楠本泰史【写真:荒川祐史】

三浦監督「平等にチャンスを与えられるとは限らない。いかにモノにするか」

■中日 4ー2 DeNA(9日・横浜)

タイラー・オースティンが左ふくらはぎの肉離れで戦列を離れたDeNA。そんな中で26歳の楠本泰史外野手が存在感を増している。9日に本拠地・横浜スタジアムで行われた中日戦には、「2番・右翼」でスタメン出場。両軍無得点で迎えた5回1死三塁では、二ゴロを転がして先制点をもぎ取り、7回1死三塁では右前適時打を放った。試合には2-4で逆転負けを喫したが、チームの得点はいずれも楠本のバットによるものだった。

「ここ最近結果が出ていない中でも、試合で使ってもらっていたので、どんな形でもランナーを還したいと思い打席に入りました」と緊張感いっぱいの楠本。三浦大輔監督は「先制の場面ではバットに当てて最低限の仕事をしてくれたし、勝負強い打撃で2点目も取ってくれた。スタメンから行っても、1打席1打席に集中している」と称えた。

埼玉・花咲徳栄高、東北福祉大を経て2017年ドラフト8位でDeNA入り。入団当初から打撃に定評があり、昨季はイースタン・リーグで打率.365、6本塁打をマークしているが、1軍定着に至らなかった。

今季も開幕は2軍。5月28日に1軍昇格を果たすも、シーズン前半終了時点で打率.222と低迷していた。しかし、東京五輪開催に伴う中断期間が明けた8月15日のヤクルト戦から10月1日の巨人戦までは、全て途中出場ながら24打数9安打(打率.375)の猛打。左打者でありながら、左腕を苦にしない。特に、9月7日の巨人戦(横浜)で大江から右翼席中段へ放った代打2号3ランは、強烈な印象を残した。

外野陣はオースティン、桑原、佐野の3人がいずれも打率3割をマーク

DeNAの外野陣は今季、オースティン、桑原、佐野の3人がいずれも打率3割をマークしリーグトップ10入り(9日現在)の好調ぶり。付け入る隙がなかった。それでも、桑原が左手薬指の突き指で今月2日の巨人戦を欠場すると、楠本が代わりに「1番・中堅」で出場。そして、オースティンの離脱以降、右翼でスタメン出場を続けている。

就任1年目の三浦監督は「プロ野球は結果の世界。必ずしも全ての選手に、平等にチャンスを与えられるとは限らない。多かったり少なかったりがある。どうやって少ないチャンスをモノにできるかどうか。勝負強さが必要になる」としみじみと語る。「結果出ないから努力していなかった、というわけでもない」と胸中は複雑だ。

その中で今季這い上がってきたのが楠本。「1軍に上がってきて最初は代打。ポツポツ結果を出すようになって、勝負所で使ってみようかとなり、オースティンが怪我をして、それならスタメンで、となった」と指揮官は目を細める。

DeNAは今季残り11試合。楠本にとっては、ここでどれだけアピールできるかで、来季のレギュラー争いの様相が変わってくる。死にものぐるいで結果を出していくしかない。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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