奥の院への参道、復旧進む 栃木の満願寺、重機使えず手作業で

開通したものの、土砂が残るなどして危険な状態の参道

 【栃木】2019年の台風19号に伴う土砂災害で寸断された出流町の名刹(めいさつ)・出流山満願寺の奥の院につながる参道が11日までに、被害から2年を経て開通した。現場は山あいで工事を引き受ける業者が見つからず、今春になってようやく協力業者が現れ復旧できた。しかし参道は土砂の一部が残るなど危険な場所があるため、一般の立ち入りが可能となるまで時間がかかりそうだ。

 同寺は日光開山の祖勝道上人(しょうどうしょうにん)が奈良時代に開いた。寺の起源となった奥の院は本堂から約1.5キロ離れた山林にある。2年前の土砂災害で参道は土砂や倒木で寸断され、鉄筋コンクリートの橋が土石流で流された。

 参拝再開を望む意見は多く、同寺は早期復旧を目指した。だが、付近を通る林道も被害を受けて重機を運び入れることが困難なため、工事を引き受ける業者が見つからなかった。

 今年に入って、仲方町の建設業「いろは」の豊田信一(とよたしんいち)社長(41)が、同寺でかつて滝行をした縁で工事を請け負い、5月末に手作業での復旧が始まった。

 作業員は参道を歩いて資材を運び込み、橋は倒木を活用した丸太で再建。土砂で滝つぼが埋まった「大悲の滝」は、スコップで砂を丁寧にかき出した。

 参道は通行できる状態まで復旧したものの、土砂が残り滑りやすく、周囲の倒木も多い状態。竹村教誠(たけむらきょうせい)住職(58)は「少しずつ復旧しているが、どこまで直せば安全に参拝できるか手探り」と言う。

 復旧工事は今月終了する見込み。奥の院の参拝再開について同寺は、市が来年度中に復旧させる予定の林道の開通を待ち、さらなる参道整備を進めてから検討する考えだ。

人力でかけ直した参道の橋
台風19号の爪痕が残る奥の院

© 株式会社下野新聞社