「日本を代表する左腕に」 4球団“ドラ1投手”隅田が抱負 交渉権は西武に

会見で、意気込みや両親への感謝の言葉を述べる隅田=福岡県苅田町、西日本工大

 緊張感が漂う1位指名。自身の名が4度も呼ばれた。事前に1位を公言していた西武に交渉権が決まると、隅田(長崎県立波佐見高-西日本工大)は端正な顔を少しほころばせて「日本を代表する左腕になる。日の丸を背負いたい」と抱負を述べた。
 最速150キロ左腕として注目を浴び始めた今春。「ドラフト候補と言われるのはありがたいが、それを確信にしたい」と口にした。その決意通りに、6月の全日本大学選手権の上武大戦で14奪三振の快投を見せると、秋のリーグ戦は4試合計26イニングを投げて1失点、42奪三振。直球と多彩な変化球の制球は抜群で「試合をつくれる投手」と評価を高めた。
 逆境をバネにする力がある。高校時代、左肘の疲労骨折を乗り越えて甲子園に出場。その後、中央ほど脚光を浴びる機会は少ない地方大学で自らを磨いた。体重は高校時代より10キロ近く増え、球速は7キロアップ。西日本工大の武田啓監督も「強い信念を持っている」と目を細める努力家だ。
 プロでは即戦力として期待されている。「打線を信じて腕を振って投げる。新人王も狙いたい」と自覚も十分で、目標とする選手に同じ左腕で長く活躍する和田(ソフトバンク)、対戦したい相手には吉田正(オリックス)の名前を挙げた。
 家族の支えも原動力の一つ。グラブには両親と自身、弟妹の名前の頭文字「弘悦知大葵」の刺しゅうを施している。身長162センチ、球速120キロにも満たなかった高校入学時から、時を経て、4球団競合の“ドラ1投手”に成長した22歳は、プロの世界でも努力で道を切り開いていく。

 【略歴】隅田知一郎(すみだ・ちひろ) 大村市出身。西大村小2年時に大村クラブで軟式野球を始め、西大村中から波佐見高へ。3年時には左右二枚看板の一角として、チーム16年ぶりの夏の甲子園出場に貢献した。西日本工大では1年春のリーグ戦から登板。4年春はチームを優勝に導いて最優秀選手となり、全日本大学選手権でも好投した。リーグ通算42試合登板、14勝5敗。持ち球は直球、チェンジアップ、スライダー、ツーシーム、スプリット、カットボール、カーブ。左投げ左打ち。177センチ、76キロ。22歳。

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