ハネムーンだけど

 岸田文雄首相は就任からきょうで10日。新政権の誕生後、しばらくの間は性急な評価や批判を差し控えて船出を見守る「ハネムーン期間」はもちろん知っている▲しかし、衆院の任期満了の直前に発足し、最初の仕事が総選挙-という政権だ。余計な配慮は禁物だろうし、首相の側も甘い期待はしていまい。では、この10日で見えてきたものは▲「政治とカネ」で大臣を辞めた甘利明氏の自民党幹事長就任について先日「改革姿勢に黄信号」と書いた。代表質問で野党が追及すると、首相は「説明責任の在り方は本人が判断すべき」と述べた。違う。求められているのは首相の見解なのだ▲「成長と分配の好循環」を掲げる経済政策では「成長なくして分配なし」と強調した。これでは「アベノミクス」とほとんど変わらない。党の総裁選で格差解消策として打ち出した金融所得への課税強化は見る間にトーンダウンした▲核兵器禁止条約締約国会議へのオブザーバー参加は前首相と同様のゼロ回答だ。被爆地のため息は聞こえているか。どんな顔で広島の選挙区に帰るのだろうか、人ごとながら心配になる▲見えてきたものは-と書いたことを訂正しなければならない。「岸田さんらしさ」がなかなか見えない。それがこの人らしさ、か。性急な評価は避けたいが。(智)

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