親の背中を

 今も昔も、子どもたちが多かれ少なかれ「親の背中を見て育つ」ことに異論はないだろう。だから、親の生き方を見ながら子の職業観が次第に育まれ、やがて親と同じ仕事に就こうと考える-そのこと自体は、とても自然で幸福な職業選択の姿なのだとも思う▲政治家の「世襲」も、全くの例外ではないのかもしれない。選挙は勝たなければならないから、政党が候補者選びの過程で、地盤や看板を引き継ぐ手っ取り早さを選ぶことも否定はできない。ただ、政治家は家業ではないし、既得権益のリレーはよくない▲前政権発足時の支持率の記録的な高さを思い出す。世襲とは無縁で、決意一つで政治の世界に飛び込み、首相まで登り詰めたサクセスストーリーへの共感も数字を押し上げたに違いない▲最近どこかで読んだのは〈世の中には「屋」の付く仕事と、作家、画家のように「家」の付く仕事があって、基本的に「家」の方は一代限り…〉。無論、政治家は後のグループだ▲もっとも、世襲もアドバンテージばかりではないらしい。「この名字が選挙を戦い続けてきたのだから反発も敵も多い」はある政治家一族の反論。同僚が教えてくれた▲次の衆院選、2世・3世の立候補予定者は県内にも。親の背中を追う人々の熱意や決意に有権者の視線が注がれる。(智)

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