2日間で10レース! 池江璃花子に“過酷メニュー”課したコーチの狙いは

ハードなスケジュールを完遂した池江(東スポWeb)

〝過酷レース〟の狙いは? 競泳の日本短水路選手権最終日(17日、東京辰巳国際水泳場)、東京五輪でリレー3種目に出場した池江璃花子(21=ルネサンス)は100メートル自由形決勝で53秒08の2位。約1時間後に行われた100メートルバタフライ決勝は4位に終わり、出場5種目で優勝はゼロに終わった。その一方、今大会は2日間で10レースという過密スケジュール。コーチを務める西崎勇氏が〝鬼メニュー〟を課した意図は何だったのか。

もはや余力など残っていなかっただろう。池江は100メートル自由形予選を全体1位で通過したものの、決勝ではトップの五十嵐千尋(T&G)に0秒24及ばず2位。直後に行われた100メートルバタフライは4位で終え、しばらくプールサイドに上がることができなかった。レース後は疲労を理由に取材に応じることなく会場を後にした。

初日(16日)に50メートル自由形、50メートルバタフライ、100メートル個人メドレーに出場し、特に決勝は約1時間15分で3レースを泳いだ。池江は初日を終えた時点で疲労を口にしており「3種目のうち1種目は棄権してもいいかなと思った」と話したほど。それでも「(今大会の目的は)強化の一環。そういう意味では棄権したら意味がないと思った。気持ち的にも体力的にもきつかったんですけど、最後までやらなきゃという気持ちでレースに出た」と明かしていた。

こうして2日間で10レースを泳ぎ切り、西崎コーチは「10レース目までチャレンジし続けるというところをテーマとして挙げていた。(大会前に)途中で苦しくても最後まで、ゴールまでは気持ちを切らさずにという話をしていた。本当に頑張った」とねぎらった。

2年前に白血病を公表した池江は闘病生活を乗り越え、1年延期となった自国開催の大舞台に出場。五輪後はかねて金メダル獲得を目標に掲げる3年後のパリ五輪に向けて再び走り出した。ただし、復帰から1年あまりで海外のトップ選手と互角に戦えるほど勝負の世界は甘くない。

そうした中、今回〝鬼メニュー〟を課したのは課題を洗い出すことが大きな理由だった。実際に西崎コーチは「今はスタートがどうしても出遅れてしまうので50メートルの距離になると少しかき焦る場面も見受けられたが、100メートル、200メートルになると彼女の持ち味である大きく長いストロークをきかせた泳ぎができている」と現状を分析した。

池江はこれまで数々の指導者とタッグを組んできたが、復帰のタイミングで西崎コーチを中心とする新体制がスタート。周囲から「西崎さんが一番、璃花子を乗せるのがうまいのでは。〝トリセツ〟を持っているみたい」との声も上がる。

今後は来年5月の世界選手権(福岡)に照準を合わせる池江。どんな泳ぎを披露するのか楽しみだ。

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