西武・松坂が引退会見 家族の質問に言葉詰まらせ涙流す「長い間我慢してもらった」

引退会見で涙を見せた松坂大輔

西武・松坂大輔投手(41)が19日、メットライフドームに隣接する球団事務所で引退会見を開いた。

ライオンズ復帰後、初めて背番号18のユニホームに身を包んだ松坂は「今シーズンを持ちまして引退することを報告いたします」と会見を切り出し、引退を決意するに至った経緯など23年間のプロ野球人生を自分の言葉で振り返った。

約1時間に及ぶ会見の中でスマイルが代名詞となっている松坂が思わず言葉を詰まらせ、涙を見せたのが質問が「家族の質問」に及んだ場面だった。

右手のしびれが悪化し、体が思うように動かなった松坂が「もう難しいかもしれないという話は家族としていた」と語り、質問者がその時の家族の反応についての質問を返した。

ここで言葉に詰まり、「だから会見はしたくなかったんですよね…」と涙をこらえていた松坂だったが、やはりその思いはこらえ切れず、流れる涙をそのままに家族に対する思いを語り始めた。
「やめると決断した時に妻に電話をしたんですけど、ちょうど(そばに)息子がいて…(沈黙)。『本当に長い間、お疲れさまでした』と言ってもらいました。僕の方からも『ありがとう』という言葉を伝えさせてもらいました」

これまで公には一度も語ってこなかった家族への思いを語った松坂はその裏側にある深い感情を「ただ一言で感謝と言ってしまえば簡単なんですけど、そんな簡単なものではなかったですし、いい思いをさせてあげられたかもしれないですけど、家族は家族なりに我慢というかストレスもあったと思いますし…。本当に長い間我慢してもらったなと思います」と謝罪した。

遠く米国ボストンに住む倫世夫人と1男2女の子供たちは当然、松坂の体の状態を把握しており「実際にやめるよという前にそろそろやめるかもしれないという話をした時には『遊ぶ時間が増える』と喜んでいた。でも実際に報告をした時にはみんな泣いていた。僕には分からない感情を妻や子供たちは持っていたのかもしれないですね。それを知って改めて感謝の気持ちと同時に、申し訳なかったという気持ちになりましたね」と感謝の言葉を重ねた。

度重なる故障で体の自由が利かなくなったここ数年は松坂の話題が出る度にネット上には不確かな情報を元にしたネガティブな書き込みが溢れ、家族に対する誹謗中傷までが流されてきた。

嫌でもそれを見聞きすることとなる夫人や3人の子供たちのことを何より松坂は心苦しく思っていた。

「妻と結婚してもらう時も批判の声だったり叩かれることもたくさんあると思うけど、自分が守っていくからと言って結婚してもらったんですけど、半分以上それができなくて本当に申し訳なかったなと思います。妻は本当に関係ないところで叩かれたりすることもあって本当に大変だったと思います。そんなに気持ちの強い人ではなかったので本当に迷惑をかけたと思いますし、その中でここまでサポートしてくれて本当にありがとうございましたと改めて言いたいですね」

会見の中で松坂が涙を流した唯一の質問となった「家族」に対する思いは見ている側には想像もつかない程、深く強いものだった。

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