衆院選 長崎2区 加藤候補「親子」前面に打ち出さず 世間の厳しい視線意識

加藤竜祥氏の出陣式で、本人の決意表明に耳を傾ける寛治氏(中央)=諫早市

 衆院選長崎2区の自民新人、加藤竜祥候補(41)は、今季限りで引退した父寛治氏(75)の地盤を引き継いだ。組織戦で知名度アップを急ぐ一方、世襲に向けられる世間の厳しい視線も意識し「親子」を前面に打ち出すことは控えている。
 「何やらデジャブのような気がします」。2日、長崎県諫早市であった竜祥氏の事務所開き。あいさつした党県連の古賀友一郎会長は苦笑いした。2カ月前、4選を目指していた寛治氏の事務所開きで支援を求めたばかり。会場も出席者の顔触れも同じだった。
 寛治氏は体調不良を理由に引退を表明。安倍晋三元首相や寛治氏の秘書を務めた長男竜祥氏の擁立が急転直下で決まった。「父をそばで見続け、公に尽くす姿をいつしか自分自身と重ね合わせていた」
 約3年前、島原市内であった竜祥氏の結婚披露宴。安倍氏の祝辞動画に続き、父親と同じ細田派の萩生田光一氏(現経済産業相)は「いずれ一緒に仕事をしたい」との趣旨のスピーチ。後継者として、その存在を周囲に印象づけた。
 その初戦は、比例北陸信越からくら替えした立憲民主前職、松平浩一候補(47)との一騎打ち。県議時代から無敗を誇った父親の地盤をそのまま受け継ぎ、党営選挙で臨む。だが短期決戦ゆえに知名度はまだ低い。公示前、大票田の諫早市では自民県議が企業回りを助け、陣営は自民市議らに担当地区を割り当て。「父親の時はここまでやっていなかった」(関係者)ほどだ。
 この状況を、加藤親子のおひざ元の島原市で松平候補を支援する男性は「政治の私物化だ」と冷ややかに見る。
 陣営も、こうした批判を敏感に感じ取っている。「世襲が悪いのでしょうか。医者の子どもは親の背中を見て医者になる。竜祥さんは即戦力の世襲」。公示前の集会で弁士はこう理解を求めた。自民地域支部の幹部の一人は「選挙戦で父親が表に出てきてもプラスにはならない」と話す。
 19日、諫早市での出陣式。寛治氏はマイクを握らず、竜祥氏も第一声で父親に言及しなかった。その胸中を陣営幹部は「世襲と言われるのを断ち切ってやっていくんだ、という本人の意志(の表れ)。自然体で戦っていく」と代弁してみせた。竜祥氏が乗り込んだ選挙カーには、父親が掲げ続けた「千里同風」と自身の「創。」の政治スローガンがあしらわれていた。
 今回の全国の衆院選候補者を見ると、自民では世襲候補が3割、立民でも1割を超えている。


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