優勝に近づくヤクルトとロッテに共通する強み 得点増に欠かせぬ重要な“率”とは?

ロッテ・井口資仁監督(左)とヤクルト・高津臣吾監督【写真:荒川祐史】

得点を増やすためには打率よりも出塁率の高さが重要

2021年のプロ野球も残りあとわずか。セ・リーグはヤクルトが優勝へのマジックを3に減らし、2位の阪神が0.5ゲーム差で追いかけている。パ・リーグはオリックスが首位に立つものの、残り試合数の多い2位のロッテにマジック5が点灯するという珍しい事態となっている。

相手よりも1点でも多く得点し、1点でも少なく抑えることが野球の鉄則。その中で、ヤクルトは12球団最多の605得点を叩き出し、ロッテもパ・リーグで最多の566得点をマークする。両チームに共通するのがチーム全体の出塁率が高く、特に1、2番が多く塁に出て、3、4番でしっかり返すという打線としての形ができているところ。

ヤクルトのチーム出塁率.334はリーグトップ。チーム打率.255は広島の.264、DeNAの.258に劣るものの、この2球団よりも100個ほど多い四球を選んで出塁率を押し上げている。主に塩見が入る1番が.341、青木が入る2番が.328と3割を超える出塁率をマーク。阪神や巨人、広島も1、2番は同程度の出塁率を残しているが、ヤクルトは山田の入る3番が.381、村上の入る4番も.409と高い出塁率を残しており、強力な上位打線を形成していた。

さらに言えば、山田、村上は5割を超える長打率を記録しており、破壊力も満点。1、2番が出塁し、中軸の長打で返す、という形が作られていた。下位打線も打率はそこまで高くなくとも、3割半ばの出塁率を記録している。出塁率.334、長打率.401と、チーム全体としての出塁への意識の高さと、長打力のバランスの良さが表れている。

4位に沈んだソフトバンクは1、2番の出塁率の低さが際立つ

ロッテのチーム出塁率.323は楽天に次いでリーグ2位。ただ、荻野が座る1番の出塁率が.371と他の5球団を凌駕する。シーズンを通じてマーティンや藤原が入った2番も.340と高い率で、これを中村奨やレアードらが返す形。チーム長打率.382はリーグトップでバランスが取れた打線だった。ロッテに次ぐ547得点のオリックスも福田、宗の1、2番が3割を超える率で出塁し、3番の吉田正、4番の杉本という長打のある中軸が返すという打線の並びになっていた。

これらの球団と対照的だったのが、パ・リーグで4位に沈むソフトバンクだ。今季、得点力不足に悩まされ続けてきた要因の1つが、上位打線の出塁率の低さにある。周東、牧原大、三森が起用されていた1番の出塁率はわずか.268。2番も.304と他球団に比べて低い。柳田という球界トップクラスの主砲が中軸にいながら、その前に走者が置けない状況になっていた。それでも、リーグ3位の542得点を奪っており、上位の出塁率が改善されていれば、また違った展開になっていたかもしれない。

また、パ・リーグで出塁率トップだった楽天の520得点はリーグで5位の少なさだった。1番は.320、2番は.361と出塁率は高く、3番、4番もそれぞれ100個を超える四死球を選んでおり塁を賑わせた。ただ、チーム長打率が4位の.366と伸びず、歯車が噛み合わなかった。島内が打点王を争う活躍を見せているが、長打のある浅村が本調子ではなかったのも響いた。

チームの得点数を増やすことに繋がる上位の出塁率と長打率。今季の各球団の戦いぶりを見ても、打線を組む上で、これらは打率以上に重視すべきポイントと言えそうだ。(Full-Count編集部)

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