持ち家VS賃貸。結婚するかわからない39歳、社宅を出た後はどっちがお得?

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、39歳、社宅に住む会社員の女性。あと7年で社宅を退去しなければならない相談者。現在は結婚するかしないかはわからない状況だといいます。社宅退去後の住居は、賃貸と購入、どちらがメリットがあるでしょうか? FPの坂本綾子氏がお答えします。

こんにちは。未婚の39歳女性です。年収は、1,000万円を超えたのですが、お金に関する不安が拭えず、ご相談をさせていただきます。

現在、新卒から同じ会社で勤務しており、会社の社宅に住んでおります。会社の社宅は、あと7年は住むことが可能で、おかげさまで、住居費は安くすんでおります。ただ、いつかは退去しなければなりません。もし、自己都合(結婚など)で退去した場合は、再度、社宅を利用することは不可です。

いつか結婚するだろうし、その時退去するだろう。と考え、住宅のことはあまり考えていなかったのですが、結婚の予定が明確でない点、親も70歳になり、入院したこともあり(現在退院)、今後の介護も心配となってきました。

現在の住宅から、実家までは電車(2回乗り継ぎ)やバスで1時間です。どこかのタイミングで、より実家が近いところに、転居や、マンションを購入した方が良いかと考えております。マンションは中古でもよく、3,000万ぐらいを検討しております。

一方、年収は高いのですが、思った以上に税金を取られる点と、激務で定期的に精神的に参ってしまう状況があり、定年まで務めるのは厳しいのではないかと考えております。そのため、50歳前には、年収600万円ぐらいまで下げてでも、自分の時間を取れる仕事にシフトしたいと考えております。

具体的に、いつぐらいにマンション購入を考え、頭金はどれくらいを考えておいたほうが良いでしょうか。また、マンション購入の際は、税金や管理費もかかるため、そのデメリットをどうリスク判断すべきでしょうか。ローンは、転職前に組むべきでしょうか。

また、今回、質問を投稿するにあたり、お小遣いという概念がなく、毎月貯蓄ということもしておらず、見直す点にも気づきました。住宅についてもですが、専門家として、注意した方が良い点もお気づきになりましたら、アドバイスいただけると幸いです。

【相談者プロフィール】

・女性、39歳、会社員

・同居家族について:社宅暮らし

・お住まいの都道府県:大阪府

・住居の形態:社宅(大阪府)

・毎月の世帯の手取り金額:40万円

・年間の世帯の手取りボーナス額:180万円

・毎月の世帯の支出の目安:約35万円

【毎月の支出の内訳】

・住居費:4万円

・食費:6万5,000円

・水道光熱費:1万2,000円

・教育費:5万円

・保険料:2万円

・通信費:1万5,000円

・お小遣い:約10万円

・その他:5万円

【資産状況】

・現在の貯金総額(投資分は含まない):700万円

・現在の投資総額:1,620万円(毎月、会社の株[イギリス]を10万円購入[配当1〜2%]。確定拠出年金5万5,000円の投資。NISAは年間120万投資できるよう投資。資産としては、会社株500万[日本円換算]、日本国内株550万、投資信託300万、預金700万、債権100万、外貨建て保険200万[豪ドル]を持っています。[確定拠出年金の金額は、上記に含みません])。


坂本:年収が高いのは、しっかり働き、それが認められているからですね。ただし激務なので50歳前には年収を下げてでも自分の時間が取れる仕事にシフトしたいとのこと。実現させる方法を考えてみましょう。

一人暮らしならギリギリまで社宅に住むのが経済的にお得

まず住宅について。社宅制度を廃止する企業が増えている中、社宅に住めるのは経済的に大きなメリットです。現在、年間300万円ほどを貯蓄や投資に回していますが、これができるのは社宅で住居費が安くすんでいることも理由のひとつです。あと7年住めるということは、このペースなら資産を2,100万円積み増すことができます。現在の残高と合わせると約4,400万円になりますから、1人暮らしならギリギリまで社宅を利用してはいかがでしょうか?

ただ最近は40歳前後での結婚や出産が増えていますので、もし途中で結婚ということになれば、2人にとって便利な場所にしばらく賃貸で住んでみてから、夫婦の希望を擦り合わせて、購入する住宅の場所や予算を決めるのが合理的です。結婚したら、その時点から、2人のライフプラン、マネープランを立てることになります。

結婚しなかった場合は購入のほうがメリットあり

結婚しなかった場合は、社宅を出た後は賃貸よりも購入の方がメリットがあるでしょう。退去せずに住み続けることができますし、資産価値が落ちにくい住宅を買っておけば、イザとなったら人に貸したり、売ったりすることができます。資産残高や収入からいって、3,000万円程度の住宅は無理なく買うことができます。

一括で購入しても暮らしていける

住宅の買い方ですが、7年後には金融資産が約4,400万円に達するので、現金一括での購入も可能です。一括ならローンを組む金融機関に払う手数料は必要なくなり、購入時の諸費用は不動産会社への手数料や火災保険料などですみます。

諸費用として200~300万円払っても、手元には1,000万円超が残ります。それなりの資産価値がある中古マンションを買ったとすると、固定資産税や管理費・修繕積立金などの負担が月3万円前後になりそうです。多めに見積もって、現在社宅の家賃として払っている4万円を購入した住宅の維持費に充てると考えると、毎月の家計収支は今と変わらないことになります。

現在の毎月の生活費は25万円(お小遣いを除く)、年間では300万円です。転職により年収が600万円に減ると手取りは400万円台半ばになりますが、それでも年間100万円以上の余裕があるので、これを貯蓄や投資に回したり、突発的な支出に充てたりすることができます。大きな病気などをせずに働き続けることができれば、住宅購入で減った金融資産は年間100万円ペースで回復していきます。

ローンを組む場合のメリット&ポイントは?

金融資産が少なくなるのが不安なら、一部を住宅ローンにする方法もあります。その場合は、転職前の方が審査に通りやすいでしょう。ただし金額は、転職後の収入に合わせて、毎月の返済額と管理費・修繕積立金の合計が月10万円以内になるようにすれば無理がありません。

返済期間は60歳までの14年間。金利1%なら、約1,000万円借りられて、毎月の返済額は7万円台です。3,000万円の住宅なら頭金として2,000万円程度を入れることになりますが、借り入れの分、手元の金融資産として2,000万円超を残すことができます。住宅ローンの分、毎月の余裕は少なくなります。

転職前の収入で住宅を探しローンを組もうとすると、もっと高い物件で、住宅ローンも多く組むことを勧められると思いますが、転職を前提として、決めた予算をしっかり守ることが、その後の生活を安定させるポイントです。

購入時の税制優遇についてもチェック

住宅ローンは、分割して払えるメリットがある反面、利子の負担が生じます。住宅ローンの金利は現在かなり低い水準で、さらに住宅ローン控除により、ほぼ無利子で借りられる状況です。7年後の金利がどうなっているか、住宅ローン控除は2021年中に入居することが条件(新型コロナの影響を受けた人は特例あり)なので、税制改正により延長されて購入時に利用できるかどうか、その時の状況に応じて判断してください。

団体信用生命保険のメリットを知る

また、住宅ローンを組む際には団体信用生命保険に入るので、自分に万一のとき家族に住宅を残せるメリットがあります。親や夫や子どもなど、家を残したい人がいるかどうかも住宅ローンを組む際の判断材料になります。また、ここ数年、住宅ローンの団体信用生命保険は、保障の種類が広がっています。借りた人の死亡のみならず、病気やケガなどで働けなくなったときにはローンの返済が猶予されたり不要になったりする保障が付いたものもあります。その分、金利は高くなりますが、1人暮らしでも、あえて住宅ローンを組む選択肢もあります。

結婚相手との出会いなどご自身の人生の変化はもちろん、金利や住宅ローン控除、どんな団体信用生命保険を利用できるかを含めて、適切な判断ができるようアンテナを立てておきましょう。

住宅そのもの以外にも見るべきポイント

購入する住宅は築浅で、大手のデベロッパーなどが分譲した、戸数が多くて管理がしっかりしているものがいいでしょう。郊外の駅でも駅近なら資産価値を維持しやすいといわれています。購入したい住宅がある自治体がどんな都市計画を立てているかも確認しましょう。

また、額面年収から考えて、実際の手取りは記載されたものより多いはずです。収支をきっちり把握していないですよね。おこづかいの10万円は使途不明金でしょうか。年収が下がれば税金や社会保険料も減り、手取りの割合は増えますが、実質今よりも手取り収入は減るので、毎月のおこづかいの額を決めて、しっかり家計管理してください。

ご相談者のこれからの生活が充実したものであることを願っています。

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