〈動画あり〉「好きだから続けられた」 最後の畜牛農家が引退 上越市中ノ俣

 上越市中ノ俣集落で牛の繁殖農家をしている栗﨑恵安さん(82)は、今年12月で飼育を終了する。栗﨑さんは集落最後の畜牛農家で、同集落の主産業だった畜牛の歴史に幕を閉じる。

 中ノ俣では昭和初期から畜牛と肥育に取り組み、同集落で肥育した牛は「中ノ俣牛」としてブランド化されていた。住民の高齢化や後継者不在のため平成24年に牧場が閉牧。その後は個人が飼育を行っていたが、中ノ俣牛の肥育は平成30年で終了。和牛を繁殖させ、生まれた子牛を8カ月ほど育てて出荷する繁殖農家の栗﨑さんが最後の畜牛農家となっていた。

繁殖用の親牛と栗﨑さん。最後は肉牛として出荷するため、肥育を行っている

 栗﨑さんが育てた子牛は、長岡市の子牛市場で売りに出され、肥育農家の手に渡る。主にくびき牛として肥育されてきたという。

 牛舎は集落から高田側に約2キロの場所にあり、冬季は除雪が途中までしか入らないため、毎日雪山を歩いて通った。栗﨑さんの引退理由も年齢と後継者不在だが、今年の豪雪がきっかけになった。

 子どもの頃から自宅で農耕用に牛を飼っており、世話をしてきた。農業の機械化を受け、多頭飼いの畜牛を始めたのが昭和40年ごろ。初期は家のすぐ近くに牛舎があったが、昭和55年に現在の場所に牛舎を建設した。当時は4世帯が合計100頭の牛を飼っていたが、10年ほど前からは栗﨑さんのみとなり、妻のシヅ子さん(78)と二人三脚で世話をしてきた。

 現在は成牛3頭、子牛2頭を飼育しており、成牛は10月末から11月初旬に、子牛は12月6日に出荷を予定している。

 栗﨑さんは「お産の時など大変で苦しいことも多かったが、牛が好きだったからこそ、ここまで続けてこられた」と話した。

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