核被害者支援へ意見交換 専門家ら「国際機関」設立を提案

核兵器禁止条約の第1回締約国会議に向け、国内外の核被害者支援について発表する登壇者=長崎市平和会館

 核兵器廃絶を目指す活動を支援する「核なき世界基金」は30日、被爆者や核政策の専門家らが、国内外の核被害者の現状や支援について語り合うワークショップを長崎市内で開催した。来年3月の核兵器禁止条約締約国会議に向け、支援の在り方に関する専門家の提言を取りまとめる考えで、キックオフと位置付ける。締約国が支援や救済に特化した「国際機関」をつくる案や、核実験の被害国など各国の救済制度に学ぶべきとの意見が挙がった。
 核被害者とは日本の被爆者だけでなく、核実験場の周辺住民やウラン鉱山労働者など。今年1月発効の同条約は締約国が自国で、または互いに連携して核被害者を援助するよう定める。来年3月の第1回締約国会議でも被害者支援が議題の一つになる可能性がある。
 ワークショップには、司会の核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)の川崎哲・国際運営委員ら5人が登壇した。核兵器廃絶地球市民長崎集会の朝長万左男実行委員長は、モンゴルのウラン鉱山における健康被害研究について報告。「世界に核被害者の数や地域は多く、一国の対応能力を超える」として、救済に特化した「国際機関」を組織することを提案した。
 核実験が多数行われたマーシャル諸島で調査を続ける竹峰誠一郎・明星大教授は、世界各地の「グローバルヒバクシャ」に目を向ける必要性を指摘。国外には核実験による居住地や文化の喪失を補償する制度もあると紹介。「世界の実態を知れば核兵器を『持つ』ことだけでも非人道的で、核抑止力に限界があると知ることができる」と述べた。
 同基金は長崎と広島の平和団体やカトリック教会関係者らが昨年7月に創設。これまで1千万円以上の寄付を受け、核兵器廃絶に向けたイベントなどを支援してきた。ワークショップは創設1周年を記念して開き、会場の市平和会館(平野町)には市民ら約80人が参加した。

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