被団協代表委員 坪井 直さん死去 県内被爆者ら「励ましの言葉を心に」

 日本原水爆被害者団体協議会(被団協)代表委員の坪井直さんが96歳で亡くなったことが分かった27日、長崎県内の被爆者らからは、長年平和運動をけん引し続けた功績をたたえ、その死を惜しむ声が聞かれた。
 被団協代表委員で、長崎原爆被災者協議会(長崎被災協)の田中重光会長(80)は、坪井さんが常に「ネバーギブアップ」と口にしていたことが印象に残っている。「あきらめない姿勢を教わった。先頭に立って活動してきた大先輩。ご苦労さまでした、という思いでいっぱい」と悼んだ。
 「被爆の記憶が失われる焦りを感じた」。高校2年の時に高校生平和大使を務めた同志社大4年の安野伊万里さん(21)は訃報に言葉を失った。2016年5月、当時の米大統領オバマ氏の広島訪問では、坪井さんと同じ会場にいた。
 広島市で開かれた平和大使の結団式で坪井さんは、つえをつきながら高校生を激励。「あなたたちを応援している」。言葉から力強さを感じたという安野さんは「被爆者だけでなく、高校生や周囲が動いていかなければと思った」と語る。
 高校生平和大使の創設者で被爆2世の平野伸人さん(74)は、坪井さんと30年以上の親交があり「励ましの言葉が今も心に残っている」。会うたびに被爆2世として核廃絶運動の継承を託されたという。「真っすぐな言葉で『二度と被爆者をつくってはいかん』と言い続けたから説得力があった。長崎で言う谷口稜曄(すみてる)さんや山口仙二さんのような『広島の巨人』だった」としのんだ。
 田上富久長崎市長は「核兵器の廃絶や被爆体験の継承に大きく貢献した。いつも明るく、広島弁の大きな声で前向きな言葉を発信し続け、包容力のあるリーダー。尊敬できる人だった。残念でならない」とコメントした。

© 株式会社長崎新聞社