60歳貯蓄ゼロは珍しくない、ここから老後対策を巻き返す方法は?

60歳で貯蓄ゼロというのは、けっして珍しくはありません。PGF生命の「還暦人に関する調査」によると、貯蓄が100万円未満という人が4人に1人です(25%)、300万円未満まで入れると3人に1人ということになります(35.7%)。

300万円未満は、老後資金としては少ないので、準備ができているとは言えないですね。老後資金を貯めるのは、どうしてこんなに難しいのでしょうか? 平均賃金をみてもわかりますが、子どもがいた場合には、教育費だけでも大変です。とても老後資金なんて貯められない……という家庭も多いでしょう。

とはいえ貯蓄ゼロは、とてもマズイ状態です。もし、病気やケガなどのトラブルがあると、生活が困窮してしまいます。これは絶対に避けたい状況です。そうでなくても長寿が当たり前の時代になって、長い老後生活を迎えるのに貯蓄がないというでは暮らしてはいけません。まして豊かな老後などは期待できません。では、どうすればいいのでしょうか?

60歳から始める老後対策を解説していきます。


再雇用で働くと厚生年金の受給額が増える

貯蓄ゼロでは、生活をすることができません。まずは働く必要があります。

「えっ、それが解決法?ほかに方法は?」と言いたくなるかもしれませんが、働くことが、もっとも有効で効果的な解決方法です。まずは、働いて貯蓄を増やすことを考えましょう。

会社員で働くと、65歳からの年金も増えることになります。私がこの説明をしたとき、「再雇用で働くと年金も増えるの?」と驚かれた方がいました。

働くと給与を受け取れるだけだと思っていたようです。会社員や公務員ならば、厚生年金に加入しながら働くので、老齢厚生年金の受給額も増えます。

どのくらい増えるのかというと、「平均標準報酬額×(5.481/1,000)×月数」で計算します。

たとえば、年収360万円の人が60歳から65歳の5年間働くと、約10万円の厚生年金が増えます。

「何だ10万円」と思われるかも知れませんが。年額10万の年金が増えるのは、じつは大きなことです。毎月1万円弱が上乗せされ、30年間受け取ると総額で300万円になります。

さらに年金を増やす方法としては、繰下げ受給があります。繰下げ受給をすると年8.4%の増額になります。70歳まで繰り下げると42%の増額です。

年金受給額200万円を308万円に増額するには?

ちょっと説明だけでは、わかりにくいので具体的な例をあげながら、説明をしていきましょう。

60歳で貯蓄ゼロになったAさん。Aさんは、退職金があったのですが、住宅ローンを完済して、貯蓄もスッカラカンになりました。

Aさんの65歳時の年金受給額は200万円。Aさんの妻の65歳時の年金受給額は100万円。老後生活の支出は、月額30万円(年額360万円)とします。

このままでは、年間60万円ずつ赤字になります。老後資金がないので、取り崩すこともできません。そのためAさんは、月給30万円で70歳まで働いて、その間は年金を繰下げ受給したとします。

さて、どうなるでしょうか?

・65歳まで働くので、65歳のときには年金受取額は約210万円に増額
30万円×(5.481/1,000)×60ヵ月=9万8,658円
200万円+9万8,658円=約210万円

・70歳まで繰り下げるので42%の増額
約210万円×142%=約298万円

・65歳から70歳まで働くので、さらに約10万円の増額
30万円×(5.481/1,000)×60ヵ月=9万8,658円

70歳からの年金額は、約308万円になる

妻の年金額100万円をプラスさせると408万円に。

Aさん夫婦の年金は408万円になり、年間の支出が360万円なので、48万円の黒字になりました(月額4万円の黒字)。

70歳以降は毎月4万円の貯金ができることになります。80歳までには、うまくいくと480万円の貯蓄ができるのです。これならもし、介護のトラブルが合ったとしても、なんとか対処ができそうです。

とにかく、毎月赤字ではなくなりますし、年金は一生涯入ってきますので、お金の心配をしない暮らしができそうです。

60歳から70歳までは、綱渡りのような生活になりましたが、この間、Aの妻がパートの仕事などをすることで、家計に余裕が出ます。またはもう少しの節約で余裕が出てくると思います。

[(https://www.amazon.co.jp/gp/product/4198653666/) 60歳で貯蓄ゼロというのは珍しくないことですが、そこから豊かな老後に持って行くには、ちょっとした知識とテクニックが必要です。家庭状況や仕事により変わりますが、どんな方法で年金を増やすか、どんな節約が有効なのか60歳からのお金の作り方を紹介しています。

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