指導者の差は「伝え方」で出る 社会人レベルの“感覚”を中学生に学ばせる方法

京葉ボーイズ・関口勝己監督【写真:本人提供】

メジャーで主流「バレルゾーン」を子どもに理解させる方法とは

千葉にある京葉ボーイズは全国大会を3度制覇し、プロ野球選手も輩出している。チームを率いる関口勝己監督が少年野球を指導するヒントになる考え方を紹介する。2回目は中学生と社会人を指導する際の共通点と違いについて連載「ひきだすヒミツ」で紹介する。

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私は現役時代、社会人チームのNTT東日本(当時NTT関東)でプレーし、引退後はNTT東日本でコーチを務めました。その経験もあって、京葉ボーイズでも社会人と同じように指導しています。そう言うと、びっくりされる時もありますが、同じ野球なので驚くことはないんです。もちろん年代によって、応用のレベルは上がっていきます。でも、基本になる部分は子どもも社会人もほとんど変わらないんです。

その基本というのは、すべてのスポーツに共通する3つの動きと、野球独特の動き1つを加えた4つに凝縮されています。

共通する動きは軸足から踏み出す足への「体重移動」。力を伝える方向に正しく体を向ける「方向性」。それから、頭を軸にして体が前後にブレないようにする「バランス」の3つです。野球ならではの動きには、体重移動する時の上半身と下半身の「ひねり」があります。この4つができれば、打つことも投げることも基本動作はつながります。そこに、子どもたちそれぞれの体に合った要素を加えていくと、自然とうまくなっていきます。

京葉ボーイズは選手のセレクションをしていません。決して技術の高い選手ばかりが集まっているチームではありませんが、中学生は伸びしろが大きいので、教え方次第で強いチームになります。大切なのは、指導する内容と伝え方です。

中学生レベルでも理解が難しいこともある

例えば、メジャーで主流になっている最新の野球理論に「バレルゾーン」があります。社会人には「20~30度の打球角度は安打になる確率が高く、中でも26~30度は本塁打の確率が上がる。投球は重力によって約10度は落ちてくるから、そのラインに合わせてバットの面を向けてレベルスイングすればフライが上がる」と説明すれば、イメージできると思います。

ところが、中学生には難しいと感じる選手も多いはずです。そこで、打撃練習の時に理想的な角度で打球が上がったら「その角度、その打ち方だよ」と声をかけて、「バレルゾーン」の感覚をつかんでもらいます。大人でも1度では理解できないかもしれない内容を、中学生が完璧に理解する必要はないんです。高校、大学と進んでいった時に「中学で聞いた話は、こういうことだったんだ」と気付くきっかけを与えるのが大切。吸収力がある中学生の時に、様々な経験をするのが将来に生きてくると考えています。

○プロフィール
関口勝己(せきぐち・かつみ) 1965年4月13日生まれ、栃木県出身。小山高、明治大を経て1988年NTTに入社。NTT関東(現NTT東日本)野球部では1995年までの現役9年間で都市対抗野球大会に6回出場、社会人日本選手権に2回出場。1991年には日本代表の対キューバ戦初勝利のメンバーとなる。2003年から08年までNTT東日本でコーチを務め、2009年から京葉ボーイズの指導にあたる。これまでにボーイズ全国大会3度優勝、2019年には春、夏連覇を果たした。(記事提供:First-Pitch編集部)

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