コロナ禍初の衆院選 「政策」「実績」「消去法」…長崎県内有権者はこう選んだ

 新型コロナウイルス禍の中での国政選挙となった衆院選は自民、公明の与党が絶対安定多数を確保する形で幕を閉じた。長崎県内でもコロナやそれに伴う経済対策が主な争点になり、与野党が熾烈(しれつ)な戦いを繰り広げた。県民の目に、今回の衆院選がどう映ったのか聞いた。
 有権者の判断基準は「政党」や「これまでの実績」、「訴える政策の中身」などさまざま。南島原市深江町の自営業、古瀬一枝さん(59)は、小選挙区は島原半島の基幹産業である農業政策に力を入れている加藤竜祥氏、比例は自民党に票を投じた。「コロナ禍で観光客が激減。早く収束させ景気回復を」と願う。平戸市野子町の漁業、浦上祐世さん(35)は「これまでの取り組み」を評価して投票したという。
 「訴えの中身」で選んだと明かすのは、西彼長与町高田郷の公務員、小川愛貴さん(33)。「子育て世帯が働きやすい環境づくり」に注目したという。諫早市永昌町の会社員、山口哲矢さん(37)も「具体的な話をしているか。若者や子どもたちの未来をどう考えている党であるか」を重視した。
 一方で「投票をしなかった」「投票をするか迷った」という声も聞かれた。
 長崎市の専門学校生、宮本聖太さん(19)は「選挙で投票しても(社会は)変わらない気がした」と投票しなかった。街頭演説を聞いたが各候補者らの公約に共感できなかったという。
 北村誠吾氏が地方創生担当相時の不安定な国会答弁などで批判を浴び、公示直前まで自民の公認が決まらなかった4区。佐世保市の会社経営の60代女性は北村氏への懸念を示す一方、比例復活した末次精一氏に対しても具体的な政策内容が判然とせず「誰にも投票したくない」と悩んだ。
 最終的には地元経済への影響などを考え「自民党だから」と消去法で選択。「決まった以上は経済立て直しをしてほしい」としつつ「今後は『この人に投票したい』という候補が出る選挙戦を」と切望した。
 選挙の在り方などに対する注文も出た。投票所の立会人を務めた東彼川棚町中組郷の自治会長、琴尾俊昭さん(77)は投票にくる若い世代の少なさに危機感を覚えた。「政治に緊張感を与えるためにも60%の投票率はあってほしい。主権者教育など基本的な対策に取り組むべきではないか」と訴える。
 松浦市調川町の団体職員、眞弓久美子さん(49)は、野党が与党批判をするだけでなく具体的な政策を前面に出した戦いを望んだが「今回も旧態依然とした選挙戦だった」と厳しい見方。新上五島町七目郷の会社員、佐藤啓介さん(28)は「オンラインで投票できるようになったら投票率も上がるのではないか」と語った。


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