子供合唱団が参加し、クリスマスの定番になったABBAの名曲

子供達の合唱隊以上にクリスマスの雰囲気を盛り上げるものがあるだろうか?ABBA(アバ)の「I Have A Dream(アイ・ハヴ・ア・ドリーム)」は厳密にはホリデー・ソングではないが、シングルとしてリリースされたのが1979年12月7日だったために、ホット・ワインやドイツのクリスマス菓子シュトーレン同様、一年のこの時期にぴったりの曲となったのだった。

(ちなみに発売から20年後、この曲は20世紀最後のヒットチャート1位という栄光の座をアイルランドのポップ・グループ、ウエストライフに与えることにもなった)

<YouTube:ABBA - I Have A Dream>

レコーディング・セッションの様子

1979年3月後半、ストックホルム・インターナショナル・スクールの合唱団は、ポーラー・ミュージック・スタジオで行われた「I Have A Dream」のレコーディングに参加するよう招待された。当時参加した28人の合唱団が受けた感動は、今に至るまで消えていないようで、参加者の一人、ガイア・ジラルデリは『ABBA: The Complete Recording Sessions』の著者で、ABBAの世界的権威でもあるカール・マグヌス・パームにこう語っている。

「私達はみんな大喜びで叫んでしまって、ほとんど泣きそうになったので、先生が私達を落ち着かせるのにしばらく時間を要したほどでした」

アグネタとフリーダはスタジオでフォト・セッションに参加する一方、ビョルンはベニーと共にスタジオでの作業をリードしていた。この合唱隊は、この後ABBAのスウェーデンでのコンサートでこの曲のパフォーマンスもサポートしている。

シングルのリリース

アルバム『Voulez-Vous』から「I Have A Dream」を4枚目のシングルとしてカットするという決定は、ちょうどABBAが11月にウェンブリー・アリーナでの一連のコンサートを完了したばかりのイギリスのマーケットからの要望が大きかった。

そこでこのシングルは、そのコンサートの写真をジャケットに使用し、B面にはそのライブから「Take A Chance On Me」のライブ・バージョンを収録して、ユニークな観音開きジャケットにした、ウェンブリー・ライブの記念アイテムとして販売された。

この戦略はうまく当たり、スウェーデンの昔のフォークとポップミュージックのブレンドのような懐かしいメロディを持ったこの曲は、イギリスのチャートを上昇してその年のクリスマスにとうとう2位までチャートを上昇したが、ピンク・フロイドの「Another Brick In The Wall」(皮肉なことにこの曲にも子供達の合唱隊がフィーチャーされている)のために1位は阻まれた。

一聴したところ「I Have A Dream」はABBAが当時造り出していたより実験的なポップ・ミュージックとはまるで別物のように思えたかもしれないが、この曲は実際ABBAの次の方向性への明確な兆候を示していた。とういうのも、この曲に含まれる大きな感情的パンチはベニーとビヨルンの80年代の作品の大半を占めることになる、ミュージカル・シアターにフォーカスした作品への方向性を指し示していたのだ。

その後のリリースとレガシー

ABBAの「I Have A Dream」の別バージョンは、2014年リリースのアルバム『Live At Wembley Arena』に収録された、1979年11月10日にレコーディングされたものを含め、その後いくつか世に出ている。

爆発的に成功したアイルランドのボーイズ・バンド、ウエストライフが1999年のABBAのトリビュート・アルバム『ABBAmania』のうちの一曲として、このプロジェクトを推進したイギリスの人気プロデューサー、ピート・ウォーターマンのために録音したこの曲は、シングル候補としてベストだった。

当時ヒット・チャート1位だったクリフ・リチャードの「Millennium Prayer」を蹴落として誰もが望むクリスマスの週の全英1位を獲得したウエストライフの「I Have A Dream」はそのまま年明けの新世紀の週まで1位をキープ。これでこの曲のクリスマスの名曲としてのステイタスは不動のものとなった。
これが夢を作り上げるレガシーというものなのだ…

Written By Mark Elliott

__

ABBA『Voyage』

**40年ぶりの新作アルバム
ABBA『Voyage』
**2021年11月5日発売

© ユニバーサル ミュージック合同会社