準硬式出身の西武ドラ5は1軍登板も経験 “目から鱗”だったベテラン左腕の金言とは

西武・大曲錬【写真:荒川祐史】

大曲錬は福岡大準硬式野球部で才能が開花、3年秋にMVPを受賞

西武は今季、“所沢元年”の1979年以来42年ぶりの最下位に沈んだが、希望の光も射し込んでいる。福岡大準硬式野球部から入団したドラフト5位ルーキーの大曲錬(おおまがり・れん)投手は今季、1軍公式戦4試合に登板し、防御率0.00。来季の飛躍が期待されている。

大曲は兄に誘われ、小学3年で野球を始めた。福岡・西日本短大付高では内野手だったが、2年秋に投手転向。チームに左右の本格派がいたことからサイドスローに挑戦した。しかし、3年夏の大会は登板機会がなく、野球を辞めることも考えたという。「高校で投げられなかったので、大学に行っても自分のレベルでは難しいかなと思い、就職も考えていました。そんな時、高校の監督に『準硬式はどうだ』と勧めていただきました」。

進学した福岡大で準硬式野球部に入部し、オーバースローに変更。3年秋のリーグ戦では最多勝、最多奪三振などを獲得し、MVPに輝いた。硬式球より球速が出にくいとされる準硬式で最速154キロをマーク。「サイドで上手くいかなかったですし、高校の時に打席に立った時、速いピッチャーを打てなかったので、単純に速い方が打ちにくいのかなと思ってオーバースローにしました。身体の使い方が全然違うのですぐにはうまくいかず、最初は試行錯誤でした」。

この活躍でプロを意識するようになった。4年春のリーグ戦は新型コロナウイルス感染拡大の影響で中止になったが、その後は硬式野球部の練習に参加する機会に恵まれた。「大会がなくなって残念でしたが、それからは硬式野球部で練習させてもらい、アピールの場を多く設けてもらいました」。

西武・大曲錬【写真提供:埼玉西武ライオンズ】

先輩左腕・武隈からの言葉は「試合で力め」

支配下での指名は予想していなかったが、西武からドラフト5位指名。プロ入り後はボールの違いから抜け球が多くなることもあったが、徐々に慣れてきたという。松井稼頭央2軍監督は「直球はいいが、三振を取れる変化球も磨いてほしい」と話す。大学時代に投げていた5つの球種をスライダーとスプリットに絞って精度を上げてきたが、再び球種を増やし始めている。

「プロのバッター相手に長いイニングを投げると、スピードも落ちるし、球種も少ないのでまだまだ力が足りないと思います。徐々に変化球を増やして、球速も上げていきたいと思っています」

ルーキーイヤーは身体づくりに力を入れ、チームの先輩たちにも積極的に話を聞いた。中でもキャリア14年のベテラン左腕・武隈祥太投手のアドバイスが心に響いたという。「『試合で力め』と言われました。『2軍で力まないように投げても、1軍に上がったら絶対力むから。力んで合わせられるようになっておけば、1軍に上がったときにちょうどいいんじゃない』と言われました。それまではむしろ力まないように投げていたんですけど『なるほど』と思いました」

2軍で36試合に登板して1勝3敗1セーブ、防御率4.43をマーク。シーズン終盤の10月16日、敵地での楽天戦でプロ初登板を果たし、1回無安打無失点に抑えた。堂々たる投げっぷりでデビューを飾った右腕は、先輩の金言を胸に更なる成長を誓う。(篠崎有理枝 / Yurie Shinozaki)

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