新しい革袋には

 ことわざに〈新しい酒は新しい革袋に盛れ〉という。新しいものを生かすには、それに応じた新しい場や形式が必要というたとえだが、こうも言えるだろう。新しい場や受け皿があってこそ、新しいものが生かされる、と▲このことわざが頭をよぎる。JR長崎駅のそばにMICE(コンベンション)施設「出島メッセ長崎」が開業した。国際会議などを呼び込んで交流人口を増やし、経済の活性化に生かしていく▲コンベンションとは集会や会議のことで、交流人口とは何かの目的で訪れる人々をいう。観光、学習、スポーツ、レジャーと、その目的は特に問わないらしい▲県全体でも県都でも、定住人口は減り続けるが、どうするか。方法の一つは、先の読めない投資には手を出さず、ひたすら無駄を省くこと。もう一つは勝負に出る投資をして、人を招く誘い水にすること。長崎市は後者を選んだ▲振り返れば、箱もの(公共施設)造りを重んじる行政に批判の目があり、財政を案じる声があった。市議会でも賛否が渦巻いた末の「受け皿」であることは心に留めておきたい▲観光に限らず、この先は大イベントに学会に展示会に“新しい顔”を迎える。どうやって、より多く呼び込むか。出島メッセという新しくて巨大な革袋には、多くの知恵も盛らねばならない。(徹)

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