手取り世帯年収900万「子ども3人を中学から大学まで私立に行かせられる?」

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、3人の子どもをもつ42歳、会社員の男性。世帯の手取り年収は900万円ほど。2歳・5歳・8歳の子どもを中学から私立に通わせたいと言いますが、今の年収で可能でしょうか? また、最低限キープすべき年収はいくらでしょうか? FPの三澤恭子氏がお答えします。


子どもが3人いますが、3人とも中学か大学まで私立に通わせることは可能でしょうか。

できるだけ子どもの希望を優先して、3人の子どもに教育費をかけたいと思っています。仮に3人とも中学から大学まで私立を希望した場合にこのままの収支で実現が可能か知りたいです。

また、私が経営不安定な企業に勤めていることもあり、このままの収入がどこまで続くかも不明瞭です。3人目が大学を卒業するまでは最低どの程度の世帯収入をキープする必要があるのか。教育にかける金額と手元に残しておくべき金額のバランスについてもアドバイスをいただけると幸いです。

【相談者プロフィール】

・男性、42歳、会社員

妻:42歳、会社員、手取り月収25万円

子ども:2歳、5歳、8歳

・住居の形態:持ち家(マンション・東京都)

・世帯の手取り金額(年収):900万円

・年間の世帯の手取りボーナス額:30万円

・毎月の世帯の支出の目安:44万円

【毎月の支出の内訳】

・住居費:13万円

・食費:15万円

・水道光熱費:2万円

・教育費:3万円

・保険料:2万円

・通信費:1万円

・お小遣い:3万円

・その他:5万円

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:5万円

・ボーナスからの年間貯蓄額:10万円

・現在の貯金総額(投資分は含まない):1,500万円

・現在の投資総額:700万円

・現在の負債総額:540万円(住宅ローン:物件購入額4,380万円、借入額2,000万円、金利0.75%、返済期間10年)

・老後資金:公的年金不明、退職金の有の場合300万円

三澤:ご相談ありがとうございます。ファイナンシャルプランナーの三澤恭子です。お子さんの希望を叶えるため教育費を優先したいとのご相談ですね。3人目が大学を卒業するまで最低必要となる世帯収入を貯蓄とのバランスをみながら考えていきましょう。

暮らしのどこにウエイト(お金)をかけるかは人それぞれ

経営が不安定な企業にお勤めとのことですが、現在のバランスシート(資産と負債の状況)は約1,600万円のプラス、負債の住宅ローンも計画的に返済されてきたようで、1人目のお子さんが中学に入学するまでには完済となり、家計にゆとりができますね。

支出を拝見したところ、食費にウエイトを置いていらっしゃるようで、子どもの体を作る食についてもお金をかけたいというお気持ちなのですね。暮らしのどこにお金をかけるかは、ご家庭それぞれの考え方になります。お子さんの希望を優先させたいという相談者様の気持ちに添いながらアドバイスさせていただきます。

まずは、お子さん3人の進路を中学から大学まで私立とした場合の教育費を確認しておきましょう。

私立中学から大学までの学費はいくらになるのか?

3年間の学費総額は中学が約420万円、高校が約300万円となります。また、中学受験にかかる塾代(模試や春夏冬の季節講習費を含む)として、少なくとも小学校4・5年生時に60~80万円、6年生時には受験料や延納料なども含めた100万円ほどを予算化しておくといいでしょう。

文部科学省の調査結果によると、私立理系は文系に比べ学費が150万円ほど高くなります。将来お子さんがどの学部に進学するかはわかりませんが、医歯系は別として平均の460万円がひとつの目安となります。

次に3人の教育費が「いつ・いくら」かかってくるのか見ておきましょう。

大学・高校・中学と子ども3人の入学が重なるときが教育費のピーク

中学入学から大学までの学費総額1,170万円に中学受験の塾代240万円を加えると中学から私立を希望した場合の一人当たりの教育費は約1,400万円となります。1人目のお子さんが私立中学に入学してから3人目が大学を卒業するまでに約4,300万円かかることになります。

また、3人目の中学受験の塾通いがはじまる小4と私立中学入学時に教育費のピークを迎えることがわかります。

3人目が大学を卒業するまでの世帯収入は最低いくら必要か?

では、ここから教育費に生活費を加え、世帯収入として最低どのくらいをキープする必要があるのか予測していきましょう。

私立を希望した場合、このままの収支で実現が可能かというご質問ですが、支出内容は変わっていきます。

まず、住居費の13万円は住宅ローンが完済となりマンション管理費等(例えば3万円)のみになるはずです。そしてお子さんの成長とともに食欲も旺盛となりさらに食費が増えそうです。その他の支出として、衣服や理美容費といった衛生費、定期代や携帯代などの交通・通信費、新聞やテレビの視聴費といった教養費、レジャーなど娯楽費や冠婚葬祭費なども増えていくと思われます。

詳細は、前提条件を反映させたキャッシュフロー表で確認していきましょう。

前提条件を確認してシミュレーションしてみよう

【前提条件】
●基本生活費は食費、水道光熱費、保険料、通信費、交通費、小遣いとする。食費は子ども13歳時に12万円増額する(2人目・3人目も同様)。
●通信費は1人目13歳・2人目10歳・3人目10歳で携帯代として6万円、交通費は2人・3人目10歳時に6万円、水道光熱費は1人・2人目16歳時に6万円増額する。
●住居費はマンション管理費等36万円(3万円/月額)と仮定する。
●その他の支出は日用品、理美容費、衣服、教養、レジャー費、冠婚葬祭費、特別費など120万円(現在のその他を含む)。
●年払いは、固定資産税等をボーナスから20万円充当しているものとする。
●児童手当は情報の記載がないため、「なし」として試算する。
●退職は65歳と仮定し、積立投資は夫婦ともに月額1万5,000円ずつiDeCoに積み立て、65歳まで拠出する。
●貯金総額は1,500万円(1人目のお子さんが中学入学までの5年間で貯めた350万円{(月5万円×12ヵ月+ボーナスから10万円)×5年}は生活防衛費として別口座で管理するものとする)
●貯金および投資残高の運用率は考慮しない。

年収900万円あれば3人を中学から私立に行かせられる

シミュレーション結果から、世帯収入は少なくとも手取り年収700万円(年収900万円)をキープすることで、お子さん3人を中学から私立に通わせることが可能と考えます。

しかし、3人目が大学を卒業するとき相談者様ご夫妻は62歳となります。現在の貯蓄すべてを教育資金に回すことはおすすめできません。現在の貯蓄から約1,000万円を教育資金に回し、毎月の収支をやりくりしながら夫婦ともに1万5,000円ずつiDeCoに加入します。仮に現在の投資額700万円とiDeCoを平均2%で運用ができたなら、65歳時には貯蓄残高と退職金を合わせて3,000万円の老後資金の準備もできそうです。

また、公的年金の情報を加味することで現在の貯蓄から教育資金に回す金額を増やすことができるかもしれません。シミュレーションを参考に、教育資金と老後資金のバランスを探ってみてください。

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