独立美術協会の会員に推挙された高増さん 海を漂着物で表現 会派に恥じない作品を

「自分らしい作品を作り続けていきたい」と話す高増さん=佐世保市内

 日本有数の美術の全国公募展「独立展」で、長崎県佐世保市の高増千晶さん(45)が同展を主催する独立美術協会(本部東京)の会員に推挙された。県内在住者では初めてで、40代での推挙は全国的にも珍しい。作品制作や独立展への思いなどを語ってもらった。
 子どもの頃から絵が好き。(佐世保市)相浦の港の近くに住んでいたので自然は友達のような感覚だった。海に打ち上げられたクラゲを眺めたり、辺りに生えている植物を絵に描いたり。幼少期の日々が今の作品作りにつながっていると思う。
 20歳ごろ東京の美術館で全国規模の公募展を初めて観覧。「こんな場所に自分の作品が置かれたら」と心が引かれた。
 特に独立展は独特な表現をする作品が集まる好きな会派だったため挑戦することを決めた。2005年の初入選から連続で入選したが、13年についに限界を感じた。当時手掛けていたのは緻密な表現や構図にこだわった作品。だが会場では作品は小さく見えて、誰も立ち止まってくれなかった。とても悔しくて、見返したいと思った。
 都会的で華やかな絵が並ぶ独立展。東京から戻り、自分にしかない個性を模索した時に「田舎に住んでいること」だと気付いた。一番身近なのは海。漂着物を使えば、他にはない表現ができると考えた。加えて自分は棚や標本が好き。木枠に海で集めた貝などを標本のように配置した作品を制作。14年の独立展に出品すると賞候補に入った。やっと認めてもらえた思いがして泣いて喜んだ。
 その後も「郷海」シリーズとして半立体の作品を制作した。地元の海は平らかで波の白色のイメージが強い。迫力を出すのに苦労したが白の同系色で漂着物を着色して構成するスタイルを作り上げた。

2019年の第87回独立展で最高賞の独立賞を受けた半立体作品「郷海・九十九」

 近年は貝だけでなく、自分が見て面白いと感じた素材も組み合わせる。フジツボがこびり付いたブイや、つぶつぶとした表面が印象的な発泡スチロールなどを用いて、磯の匂いや長崎の海の雑多な感じも伝わるようにしている。ちなみに最近は海岸ゴミが少なくなっているので、素材探しが最も大変な作業だ。
 2年前に郷海シリーズの作品で最高賞の独立賞を頂いた。受賞するまであと10年くらいはかかると感じていた上、体調を崩しながら何とか仕上げた作品だったので当時は現実感がゼロだった。先日は会員推挙も受け、会派に恥じない作品を継続的に作り続けたいと強く思う。
 新型コロナウイルス禍で昨年は独立展も中止となった。作品を出し、人に見てもらえることは当たり前ではないと痛感した。今年は県展で実行委員も務め、アマチュアの方々の作品の熱量に「負けてられない」と奮い立った。自分はまだまだ未熟。これからも研究者の立場でこの土地でしかできない新しい表現を見つけ、故郷に還元したい。

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