「平和発信 遅すぎることはない」 岡信子さん死去 田上市長ら悼む

 今年8月9日の平和祈念式典で、最高齢の被爆者代表として「平和への誓い」を読み上げた岡信子さんが4日に93歳で亡くなったことを受け、田上富久長崎市長は5日、「『平和への誓い』を力強く読み上げていただいた。これからますますご活躍いただけるものと期待していただけに、大変残念でならない」と追悼のコメントを発表した。
 岡さんは晩年まで被爆体験を語ってこなかった。田上市長は「平和の発信を行うのに、決して遅すぎることはないということを私たちに示してくれた。岡さんの思いを引き継いで、後に続く方々が出てくることを願う」と望んだ。
 岡さんは看護学生だった16歳の時、爆心地から1.8キロの長崎市東北郷(現在の住吉町)で被爆。平和への誓いでは救護所での過酷な体験を証言し、核兵器廃絶を訴えた。
 被爆者団体に所属せず、公募で被爆者代表に選出された。選定審査会長を務めた長崎平和推進協会の調漸理事長は「医療従事者としての体験を語れる人はもうほとんどいない。埋もれている被爆体験を掘り起こすことが大切と感じた。これからもっと話すことがあったはずで、本人も無念だろう」と悼んだ。

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