ポージーが殿堂入りならマンソンとポサダも殿堂入りすべき?

現役引退を表明したバスター・ポージーについて、すでに将来のアメリカ野球殿堂入りに関する議論が開始されており、「ポージーは殿堂入りするだろう」との意見が大半を占めている。そんななか、ポージーの殿堂入り議論をきっかけに「過去の捕手の評価を見直したほうがいい」との意見も出始めており、記者投票による殿堂入りの資格を失っているサーマン・マンソンとホルヘ・ポサダの両捕手に注目が集まっている。メジャーリーグ公式サイトのマイク・ルピカはこの両捕手について「殿堂入りすべきだ」と主張する。

ルピカはマンソンとポサダが全米野球記者協会(BBWAA)の投票で殿堂入りできなかったにも関わらず、ポージーが「殿堂入り確実」のように言われていることに多少の違和感を覚えているようだ。ポージーは34歳の若さで引退したため、1500安打、158本塁打、729打点など積算系のスタッツには物足りなさが残る。重労働の捕手を務めながら通算打率が3割を超えている点や2010年新人王、2012年MVP、シルバースラッガー賞4度、ゴールドグラブ賞1度、首位打者1度、オールスター・ゲーム選出7度、ワールドシリーズ制覇3度といった実績は評価できるものの、マンソンやポサダと比較しても飛び抜けて優秀というわけではない。

マンソンは1970年代にヤンキースの正捕手として活躍し、通算打率.292、1558安打、113本塁打、701打点をマーク。1970年新人王、1976年MVP、ゴールドグラブ賞3度、オールスター・ゲーム選出7度、ワールドシリーズ制覇2度といった実績もポージーと大差ない。現役期間中の1979年8月に飛行機事故で亡くなっていなければ、さらに数字を積み上げ、クーパーズタウンにプラークが飾られていたことだろう。

しかし、マンソンは15年の有資格期間(現在は10年に短縮)を完走したものの、初年度の得票率15.5%を翌年以降に超えることはなく、BBWAAによる殿堂入り投票では落選。2000年と2006年にはベテランズ委員会による選考で候補に挙がったが、殿堂入りを果たすことはできなかった。ルピカは「ポージーが記者投票で殿堂入りするより先に、マンソンがベテランズ委員会によって救済されるべきだ」と考えている。

また、ポージーのワールドシリーズ制覇3度という実績を高く評価するのであれば、4つのチャンピオンリングを保持しているポサダの再評価が検討されるのは自然な流れと言える。1990年代後半から2000年代前半にかけてヤンキースの強打の正捕手として活躍したポサダは、40歳までプレーし続けたため、通算1664安打、275本塁打、1065打点など積算系のスタッツではポージーやマンソンを上回っている。ゴールドグラブ賞の受賞経験はないが、シルバースラッガー賞を5度受賞し、オールスター・ゲームにも5度選出された。

ところが、殿堂入り投票では有資格初年度の2017年に得票率わずか3.8%に終わり、あっという間に資格を喪失。ステロイド時代の選手がなかなか殿堂入りできず、投票用紙に長くとどまっていることの被害者の1人とも言われている。ちなみに、ベテランズ委員会の選考対象になるには、引退後15年を経過していることが必要なため、2011年に引退したポサダは殿堂入りが再検討されるようになるまで少し待たなければならない。

「ポージーは殿堂入り選手である」と考えているルピカ。ただし、「マンソン、ポサダ、ポージーのうち誰か1人が殿堂入りするならば、全員が殿堂入りすべきだ」という立場は譲らない。さらに、「ヤディアー・モリーナも投票に加わるならば、4人全員が殿堂入りすべきだ」と主張する。ポージーやモリーナの殿堂入りは、マンソンやポサダといった過去の捕手の評価を見直すきっかけとなるのだろうか。

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