48歳で年収600万円会社員、3000万円の新築マンションを購入して大丈夫?

住宅ローンについては、完済時の上限年齢を80歳未満と決めている金融機関が多数を占めています。40代後半で賃貸暮らしの場合、ローンの返済上限年齢を考えるとマイホームを一刻も早く購入したほうがいいのか悩むことはないでしょうか。今回は新築マンションを購入するか悩まれている48歳会社員のケースから考えます。


コロナ禍で新築コンパクトマンションの購入を検討することに

私は日頃からファイナンシャルプランナー(以後FP)として活動していますが、住宅購入に関する相談の機会も多くあります。住宅は数千万円といった高額な買い物ですから、ライフプランを含めて横断的に考えて判断する必要があります。

新築コンパクトマンションのモデルルームを見学して購入を前向きに検討しているAさんの相談事例をお伝えします。

既にAさんは住宅ローンの試算を行い、仮審査もパスしている状況でした。購入に向けて順調に進んでいたのですが、本当に購入しても大丈夫なのか、中立的なアドバイスが欲しいと連絡がありました。

売主のマンション販売会社からは、専属のFPに相談できますよと紹介されたものの、購入したほうがいい結論ありきになってしまうのではないか、と躊躇されたそうです。

Aさんの状況と住宅購入プラン

千葉県内で賃貸暮らしをしているAさんは、都内の職場に通う48歳の会社員。とはいっても、ここ1年半はコロナ禍で自宅でのテレワークが続いています。今後は出勤体制に戻ることになりますが、テレワークが完全になくなるわけではありません。今の住まいに特段の不満はないものの、仕事から帰って寝るだけの頃に比べると、もう少し快適な住空間で過ごしたいと思うように。

具体的にはワークスペースと生活空間を分けたいと思っていたところ、近所に新築マンションのショールームができたのです。興味本位で訪れたのですが、狭いながらも工夫を凝らした間取りや分譲仕様の設備を見て、気に入ったこともあり住宅ローンの試算をしてもらいました。

住戸の広さは36平米、販売価格は約3,000万円。住宅ローンの借入額を2,720万円として試算してもらうと、月々の返済額は約7万6,000円(提携銀行の変動金利(10年固定型)0.475%で算出)で、現在の家賃と同額です。しかし、頭金やローンの諸経費などの支払いを合わせると結構な現金が必要になることが分かり不安が大きくなってきたそうです。

頭金と諸経費で約500万円の費用、住宅ローン減税は利用できない

今では頭金なしで借り入れできる金融機関もありますが、頭金とは別に手付金(販売価格の1割)を支払う必要が生じるケースがあります。

Aさんの契約では手付金300万円が必要となります。なお、頭金を入れることで、返済負担が減り、審査に通りやすくなり、さらには借入金利が下がる、とアドバイスをもらったことから、手付金を含めて320万円を頭金にすることにしました。その他に、ローン借り入れの手数料、契約時の印紙代、登記費用、修繕積立基金や管理準備金、火災保険料、不動産取得税、固定資産税など約180万円の現金が必要になります。

支払いのスケジュールは、契約時に手付金300万円、引き渡しまでに約200万円(頭金の残額20万円と購入時にかかる費用180万円)で合計500万円にまで膨らむことになります。貯蓄から出すと手元に残るのは100万円ほど。現在、年間の家計収支はプラス100万円ですが、マンション購入後は住宅ローン以外に毎月の管理費と修繕積立金、固定資産税と火災保険の支払いが発生します。その額は概算で約35万円、月に換算して今より3万円高い家賃を支払うイメージになります。

そして惜しいことに、Aさんの場合は住宅ローン減税制度を利用することができません。住宅ローン減税制度では、毎年末の住宅ローン残高又は住宅の取得対価のうちいずれか少ない方の金額の1%が10年間に渡り、所得税の額から控除されます。ただし、給付にはいくつか要件があります。検討している住戸は36平米のため、要件である床面積40平米以上に合致せず、給付を受けることはできないのです。仮に給付が可能な場合、約266万円になりますから結構な額になります。(国土交通省・すまい給付金HPにて試算)せっかく購入するのですから住宅ローン減税は利用したいものです。

住宅補助がなくなると将来の年金額も減ってしまう

さらに、勤務先からの住宅補助がもらえなくなる影響についてもお伝えしました。Aさんが賃貸住まいでなくなると住宅補助がなくなります。その分給与が減り、年換算では34万円程です。

ここからが重要なポイントになるのですが、住宅補助は社会保険料を算出する月給に含まれるのです。つまり、将来の年金額や介護休業給付金の支給額が減ってしまうという負の影響もあるのです。あくまでも現状の年収が定年退職まで続くと仮定での試算ではありますが、Aさんの老齢厚生年金は年間約3万円少なくなってしまいます。

勤務先からの住宅補助がなくなると、結果的に住居費負担は毎月6万円弱増えることが判明しました。Aさんの出した結論は、今回の物件については見送ることでした。また、マイホーム購入については、定年後は通勤もなくなり、住む地域に縛られることはありませんから、ローンを利用しないで現金で購入できる選択肢も含めて終の住まいを考えたいそうです。

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