安易なタンキングをしないレイズ ニアンダー編成本部長の哲学とは

26年ぶりの世界一に輝いたブレーブスのアレックス・アンソポロスGMは、カリフォルニア州カールスバッドで行われたGM会議の最終日、ワールドシリーズを制するためのチーム作りについて「選手層の厚さだけでなく、10月の戦いを勝ち抜くために優秀な選手、チームの勢い、そしてラッキー要素が必要だ」と述べた。また、「ポストシーズン進出=ワールドシリーズ制覇ではないが、まずはポストシーズンに進出する必要があるという事実を見失うべきではない」とも主張。実は、これはレイズのエリック・ニアンダー編成本部長の哲学と共通するものである。

カブス(2016年)やアストロズ(2017年)がチームを完全に解体する「タンキング」を経てワールドシリーズ制覇を成し遂げたことにより、球界では安易なタンキングが流行している。「今は優勝を狙えない」と判断したチームが主力選手を放出し、若手有望株をかき集めようとするのだ。しかし、ニアンダーが率いるレイズは球界有数のスモールマーケット球団でありながら、こうした安易なタンキングには全く興味を示さない。なぜなら「育成と勝利の両立は可能」と考えているからだ。

球団名をデビルレイズからレイズに変更した2008年に初のリーグ優勝を果たし、その後はポストシーズンの常連チームとなった印象のあるレイズだが、2014年から5年連続でポストシーズン進出を逃し、2016年には地区最下位に沈んだ。ニアンダーは「あのような時期を二度と経験したくない」と語る。「実現するのは簡単ではないけど、着実な上昇と持続的な成功を目指している。まずはできるだけ多くポストシーズンに進出することだ。それはワールドシリーズ制覇のチャンスが増えることを意味するからね」と再建モードと勝負モードを繰り返すようなチーム運営には否定的な見解を示した。

今季プロスペクト2投手を放出してネルソン・クルーズを獲得したように、「現在」の勝利のために動くこともあるが、ニアンダーをはじめとするレイズのフロントオフィスは「現在」と「将来」のバランスを常に考えている。だからこそ、元サイ・ヤング賞左腕のブレイク・スネルを放出したり、有望株ワンダー・フランコの昇格に備えて正遊撃手ウィリー・アダメスを放出したりするような大胆な動きもできるのだ(しかもスネルやアダメスとの交換で獲得した選手は地区優勝にしっかり貢献)。もちろん、これは今季マイナー4階級で優勝したように、育成力が伴っているからこそできることでもある。

ただし、レイズはワールドシリーズ制覇という最終目標をまだ達成していない。ニアンダーは「ポストシーズンで勝つためにはレギュラーシーズンで多くの試合に勝つチームを作ることが一番だと考えているが、(レギュラーシーズンとポストシーズンで)多少ニュアンスが異なる部分があるかもしれない。でも重なる部分は多いと思っている」と語る。そして、「何より(ポストシーズンの)経験が重要だ。今季は残念な結果だったが、選手たちは経験を積んだ。その経験は来季に向けて非常に有益なものとなるだろう」と来季への期待を口にした。

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