【追う!マイ・カナガワ】神奈川「県民歌」知ってる?(上)今は全く耳にしないけど…

県民歌「光あらたに」のCDジャケット(県提供)

 「神奈川県の県民歌『光あらたに』は今は全く耳にしないし、光があたらなくなりました。歌を知っている人はどれくらいいるんでしょうか?」。開成町に住む50代の会社員男性から「追う! マイ・カナガワ」取材班にこんな声が届いた。確かに横浜市歌は有名だが、県歌は耳にしたことがない。一体どこで歌われているのか?

◆県庁で昼休みに

 「小学生の頃、県民歌の下敷きが配られ、『光あらたに雲染めて~』と歌っていました」と懐かしむ投稿者。首をかしげる記者の横で、報道部長が「県庁に行けば、昼休みに流れている」とポツリ。それは知らなかった。

 早速、新庁舎1階の総合案内付近でその時を待った。すると、午後0時57分、その曲は流れてきた。1階は音量が小さかったので、政策局などがある2階に移動。ただ、記者も初めて聴いたので、歌詞が分からない。県のホームページで確認してみた。

 ♪光あらたに雲染めて 七つの汐路真向(しおじまむか)いに 国のあしたの窓ひらく ああ神奈川はおおらかに 希望の虹の立つところ

 県知事室によると、1948(昭和23)年の文化の日に「県章」を定めた際、「県民が心から愛唱できる県民歌をつくることになった」という。歌詞は公募され、1677点の中から高校教諭だった村瀬輝光さんの作品が選ばれた。制定は50年。70年もの歴史がある曲だったとは…。

 担当者によると、県の式典などでも流してきたが、コロナ禍でイベントが減り、合唱団からCDを貸してほしいとたまに問い合わせがある程度で、流す機会は乏しいという。

◆悩みは昔から

 「光あらたに」はなぜ、県民に浸透しないのか。

 神奈川新聞のアーカイブを調べると、制定から15年後に「歌われぬ県民歌」(1965年5月27日付)という記事を発見した。県民に知られていない悩みは、今に始まったことではなかった。

 当時も「歌うどころか聞いたこともない県民が大半。県民に忘れかけられている」として、副知事らがPRしようと検討を重ねている様子を伝えている。

 記事は「鎚(つち)の響きよ黒けむり」という4番の歌詞が、「騒音、ばい煙を歌っているようで、公害防止上ぐあいが悪い」と指摘を受け、その後歌われなくなった事情も掘り下げていた。

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